1人で病院に行く勇気はなくて、結局レギュラー陣についてきてもらった。

看護師さんには「あら、久しぶりね〜」なんて言われてしまった。
そりゃそうかついこの前までほぼ毎日来てたんだから顔を覚えられてもおかしくない。

「……柳と仁王も一緒に入って欲しいんだけど」

「なんでだ?」

「ちょっとこっちの事情…あのこと幸村くんに話すんだと思うの私。これ以上はヤバイって思ったら止めて欲しい」

「「わかった」」

2人は顔を見合わせて、そして私の要求をのんでくれた。
他の人たちは何事だという顔をしている。
彼らにも話さなければならない日が来るんだ。
それは今日かもしれないし、明日かもしれない。
お別れの日が近づいてるね。

深呼吸をして、ノックを3回。
少しだけ弱った幸村の声が聞こえた。

「失礼しまーす…」

「……みょうじさん。仁王に柳も何しに来たんだい?」

「お見舞いでーす、柳と仁王は私の付き添い」

「…そう、」

「幸村くんは体調どう?」

「どうもこうもないよ、」

幸村の口から告げられた言葉は皆にとってきっと辛かっただろうな。
それ以上に幸村も辛かっただろうな。

「もうテニスができないって言われた」

「うん、真田くんたちから聞いた」

「だから慰めにでも来たのかい?俺の気持ちなんてわからない癖に」

そう言って嘲笑う幸村は見ていて辛かった。
何度も紙の上で見たというのに、辛かった。

「幸村くんの気持ちはわからないよ」

「ならなんでだよ!俺はもう生きてる意味なんてないんだ…!」

「それは違う!」

「違わない!」

「幸村くんは生きてるじゃない今ここに。ちゃんと存在してる。私なんかとは違う。ちゃんとここに存在していい人なんだよ」

「何言って…」

幸村にも私の気持ちなんてわからないだろう。
他人の気持ちが簡単にわかったら困るよ。だから、わかりあおうとするんだ。

「私はね、パラレルワールドから来た存在なの。存在してはいけない人なの。それで、私はねもうすぐ消える。」