秒で扉を閉めたのに、奴は足を滑り込ませたらしく綺麗に閉まらなかった。

「………どうぞ」

「どうも」

結局私が負けてリビングへと案内する。
昨日のお酒の缶を置きっぱなしだったけど、20歳だとバレてる彼には意味がないだろう。

「本当に20歳なんじゃな」

「まあね、」

「昨日は逃げられたけん話をしに来たんじゃ」

「話って…あれ以上いう必要はなくない?」

「幸村は知っとるんか?」

「幸村は知らないよ。知ってるのは仁王と柳だけ。あ、昨日の女の子は知ってるね、お茶でいい?」

「お構いなく」

「仁王って遠慮できたんだね…」

「どういう意味ぜよ」

「そのまんま。はい、お茶」

昨日の説明じゃ納得いかなくなったらしく、わざわざ家にまで来たらしい。
どこからこの部屋番号を仕入れたのか不思議だが、きっと丸井あたりだろう。人の個人情報をペラペラと喋るのはいただけないなぁ。

「私が話せるのは昨日話したことだけだよ。それ以外言えることは何もないよ」

「ほうか…」

「テニス部にはもう関わらないから安心して。赤也にはたくさん話聞いてあげられなくてごめんねって言っといて」

お茶飲んだら帰ってね、と言い机の上に残されていたお酒の缶をゴミ箱へと入れる。
うーん、飲みすぎた。

コトンとコップを置く音がして、仁王の言葉が聞こえた。

「柳が、」

「ん?」

「柳がみょうじはいつも何か考えていて、いつも俺らに一線を引いとるっていっとったんじゃ。それはこのことじゃったんか?」

「大正解。ということで、仁王はちゃんと学校行ってね」

仁王が持っていたカバンを持って半ば強引に部屋から出す。
ちゃんと中学は行ってほしいのだ。

「バイバイ」

またねじゃなくて、バイバイ。