合宿最終日の今日はお昼には解散になるため、軽いミーティングのみ。
掃除などしなくていいと跡部は言っていたけど、「来たときよりも美しく」という、中学初めの宿泊研修の時に担任に言われた言葉を思い出して部屋の掃除をする。
まあ、跡部の別荘だということを考えると来たときよりも美しくすることは難しいかもしれないけど。
掃除もひと段落ついた頃に、ミーティングを行うという放送が流れたため、マネージャーのみんなと移動をすることにした。
各校の部長の挨拶をききながら、合宿中にはあまり友人たちからの連絡に返事ができなかったのだけはあやまらなきゃな、なんて思っていると跡部から挨拶をするように言われた。
「えーっと、まずは熱出して倒れてご迷惑をおかけしました…。私はテニスに全く詳しくないんですけど、これから皆はどんどん強くなるんだろうなと思いました。テニスって楽しいですね。5日間ありがとうございました。」
これから先なにがおこるか私にはわかってしまっているけれど、どこが優勝するかなんてわかりきっているけれど、この5日間を見てひたむきにテニスに向かい合う彼らを見て皆が優勝だ!なんて思ったりした。
絶対に言えないけど。
マネージャーたちの挨拶が終わるとミーティングという堅苦しいものでなくなって、ただの雑談会になった。
ライバルとはいえ、ちゃんと仲良しなのは見ててすごくほっこりする。
高め合える存在というのか、そういうの羨ましいよね。
「なまえ、おつかれさん」
「蔵もね。次会えるのはお正月かな?」
「せやなぁ」
「それまで元気でね」
「おん!なまえもな。なんかあったら連絡してきいや」
「うん、ありがとう。」
この合宿中には結構、蔵に助けられた。
中学生に助けられる20歳なんて笑いものだけど事実です…。
というか、私は中学生に助けられすぎではないだろうか。
もっとしっかりしなければ。
帰りもしっかりバスで跡部が送ってくれるらしく、荷物を預けてバスに乗り込む。
帰りの席のお隣は柳だった。
「みょうじに聞きたいことがあってな」
「ん?」
「赤也には『好きな人は作らない』と言っていたようだが」
「うん、作らないよ」
「なぜだ?」
「なぜって言われても作らないからだよ…?」
「作らないということは、好きになりかけた人ならいるんだろう?」
「柳くんは本当に目ざといよね…。でも、私の口からは言えないことだし、調べてもわからないことだろうから諦めてほしい」
「そう言われてもな」
「データマンの柳くんからすれば気になることだと思うけど、さすがに言えない。」
「幸村のファンにいじめられてることを幸村にバラす…と言ってもか?」
予想どおりいい性格してんなこいつ。
幸村に聞かれてはいないかと後ろを確認するとぐっすり眠っているようで安心した。
「柳くんいい性格してるね…」
「みょうじほどではない」
「……私がその人を好きになったとしても、私もその人も幸せになれないって思うからだよ」
「……ほう」
「納得いきませんって顔だね…。でも、それ以外はないから。私の性格的問題だよ」
性格的問題だと言ったら少し納得したようだったので良かった。
柳はいろんな意味で怖いよ。