ここは、どこ。
わたしは、だれ。
どこかで聞いたことあるセリフが頭に浮かんでは消えていく。
誰もいない真っ暗闇の中でポツンと立っていて。
右も左もわからないどちらが前なのかもわからない。
でも、私の立ち位置としてはこれが正しいのか。元の世界の記憶もないこの世界の人間でもないそんな曖昧な存在。
この世界にいれるならばこの世界に居たい……。
▽▲▽
目をさますと朝日が差し込んでいた。
よかった、まだこの世界に居た。
何に対して置いていかないでと言ったのか覚えはないけど。
右手が暖かくて、ふと右を見ると幸村が寝ていた。
ベッドとベッドの間はかなり間が空いていたはずなのに、ピタッと私のベッドにくっついていて、そのくっついているベッドに幸村が寝ている。
他の2人はどこに行ったんだ。
携帯をみると、"景吾に他の部屋用意してもらいました。ゆっくり休んでね"と沙羅ちゃんからメッセージが入っていた。
気を使わせてしまったなぁ、跡部にもあとでお礼を言わなきゃだし、真田の説得も大変だったろうし、仁王あたりが見にくるとか言ってたろうな。
「んん……」
「幸村くん」
「あ、もう朝?おはようみょうじさん」
「おはよう……」
少しずつ頭が覚醒してきたらしく、手を離してベッドの上にお互い正座になる。
「あの…これは何でまた…」
幸村が説明するにはこういうことだ。
私が完全に眠ったことを確認して部屋を出ようとしたところで、「置いていかないで」という寝言が聞こえて戻ると泣いていたそうだ。
自覚ないぞ私。
それで、手を握るとギュッと私が握り返したらしく離れるに離れられなくなったということらしい。
戻ってきたマネージャー2人に事情を説明すると、跡部に話が通り床に幸村を寝かせるわけにもいかずベッドをくっつけて手を繋いだまま寝れるようにしてくれたらしい。
マネージャー2人は先ほどのメッセージにもあった通り別部屋を用意してもらったらしくそこに移動したらしい。
なんだか……
「幸村くんには毎回多大なるご迷惑を…」
「気にしないで?熱が出た時とかは心細くなるっていうだろう?もし俺が熱を出した時にそばにいてくれればいいから」
その言葉を聞いてズキンと心が痛んだ。
なんでそんな予知的なことを言ってしまうんだ。
私は君の力にはなれそうにないよ。