そしてとうとうやってきた合宿当日。
氷帝のバスが立海まで迎えに来てくれて、跡部の別荘で合宿を行うらしい。
保健室の先生に「合宿に行くから1週間ほど休む」と伝えたら、「テニス部のみんなと関わるようになってよく笑うようになったわね」と言われた。
そこまで変わった気がしないのだが、雰囲気が柔らかくなったらしい。
友人たちは1週間お菓子を食べられないのを悔やんでいたが、ハロウィンの日の休み時間に菓子パをすることで笑顔になってくれた。かぼちゃのパンケーキでも作ってこようかな。
しかし、お菓子目当てかよ。と心の中で突っ込んだのは言うまでもないだろう。
荷物を持って立海に行くと、私が参加すると知らなかった赤也にものすごく驚かれたし、バスは隣の席に座ろう!と誘われた。後輩はかわいい。
今回の参加者は、各校来年度のレギュラー候補らしい。
きっと私が知ってるレギュラーたちから数人引いた人たちだろう。
少しウトウトしていると、跡部の別荘だと言われる豪邸についた。
これで別荘だなんて、ほんと跡部様はわからない。
「すごいね…」
「俺らは去年も来てるんだけど、何度見ても慣れないね」
執事らしき人に通された大広間には氷帝の人たちが集まっていた。
青学と四天宝寺はまだなのか。
挨拶をさせてもらった氷帝のマネージャーさんはとても美人な人で優しそうな人だった。
あと跡部の許嫁らしい。
金持ちの世界は本当にわからないなぁ。
宍戸の髪が長いのを見て2度見してしまったがそうかまだ切ってないのか。
人見知りを発動させつつ、氷帝の人たちと話すみんなを壁に寄りかかって見ていると、外からガヤガヤと声が聞こえてきた。
青学か四天宝寺が来たんだろうと思って扉に目を向けると、ちょうど入ってきた蔵と目があう。
「なまえ!」
「蔵!」
事前に私も参加すると伝えると喜んでくれたし、四天宝寺のみんなにも伝えると言ってくれた。
四天宝寺は大阪からはさすがに遠いと言う理由で残念ながらマネージャーを連れてくることはできなかったらしい。
「あら〜!なまえちゃん」
「小春ちゃん!夏休みぶりだね、元気だった?」
「もちろんよ〜」
四天宝寺のみんなのところに駆け寄ると見知った顔がたくさんいて安心した。
「お母さんが蔵ノ介くんによろしくねって言ってたよ」
「俺のオカンもゆーとったわ、なまえちゃんによろしゅうって」
「さすが姉妹だね」
「白石、跡部んとこ行かんでええんか?」
「せやった、じゃあまたあとでななまえ」
謙也に声をかけられて跡部のところに向かう蔵を横目に四天宝寺のみんなと話を弾ませる。
しかし、好きな人と話す乙女のようになってしまって謙也とはうまく話せないのがオチ。
「なまえちゃんほんと肌白いわよね〜」
「みんなと違ってあんまり外にでないからだよ」
小春ちゃんはやっぱり最初は少し…かなりびっくりしたけれど、話してみると全くそんなことなくてこの世界の人間で一番話しやすい。
時々電話もしているくらいだ。
こんなことを言うとユウジに怒られるから口が裂けても言えないけど。
知らない人だらけだから不安だったけれど、四天宝寺のみんながいればまだやっていける気がした。