無事に熱も下がって早数週間が経った。
テニス部も関東大会が無事終わり、全国大会へ無事に駒を進めた。
ちなみに今現在は夏休みなので、埼玉の実家に里帰りをしている。
特にすることもなく夏休みの課題を進めていると、幸村からメッセージがきた。
幸村に家まで送ってもらった事件以来、ちょくちょくメッセージがくる。
部活のこととかも最近は話してくれるようになったし、一度一人暮らしはすこし寂しいとこぼしてからは、たまに電話してくる。
晩御飯の話とかテレビの話とかしてくれる。
そんな幸村も半年もすれば倒れてしまうのか。
原作を知ってるからこそ辛いものもある。
私には何ができるのかわからないし、関わっていい権利があるのかすらわらからない。
今からそんな先のことを考えていたって鬼に笑われるかもしれないけど。
「はぁ………」
ため息をついていると、リビングから母親の声が響いてきた。
「なまえ〜!そろそろ出かけるわよー!」
「あ、はーい!」
今日は東京へ家族でお出かけだ。
従兄弟の部活の試合の応援に行くらしい。
暑い中出かけるのは好きじゃないけど、家族で!と念を押されては行くしかないじゃないか。
野外だから焼けるのになぁ。日焼け止め塗りたくろう。
「蔵ノ介くん本当にすごいわよね〜、全国大会ですって」
「そうだね」
「立海も全国大会なんでしょ?」
「そうそう、すごいよね」
そう、私の従兄弟というのは四天宝寺の白石蔵ノ介。
以前、公立の中学にはクーラーがないという話をしたがその情報提供元は蔵である。
蔵だけ以前いた世界とは違う呼び方で呼んでいる。
幼い頃からそう呼んでいたらしく、私の本能がついつい蔵と呼んでしまうのだ。動物かよ。
電車の中で蔵に家族で応援に行く旨をメッセージで伝えると、ありがとうとメッセージがきた。
色々なことを考えているといつの間にか会場の最寄り駅についていて、会場まで徒歩で向かう。
ちらほらと見える見覚えのあるジャージに少しだけ心が踊る。
女生徒も沢山いて、注目度の高さが素晴らしい。
「あ、なまえー!」
「蔵!」
母達は先に席を取りに行ってくると言い、私を蔵のところへと向かわせた。
見覚えのあるジャージを見つけて声をかけようとした瞬間向こうから声をかけられて周りの視線をほんの少し集めることになった。
恥ずかしい。
「来てくれたんやな!」
「そりゃ、蔵が来てってあんだけメッセージ送ってくるんだから」
「せやったな」
他の四天宝寺の人たちが不思議そうな顔をしているけれど、多分それは1年生。財前もその中に混ざって不思議そうな顔をしている。
2.3年生は"今年もか"という顔。
「お母さん達待ってるから行くね。頑張ってね」
「おん!」
ぐっと親指を立ててエールを送る。
まあ、勝つのは立海だけど。