部活が終わったらしい幸村が花壇まで迎えに来てくれて、部室に向かう。
制服も乾いたみたいで、誰もいなくなった部室を使わせてもらって着替えをする。

仁王に「ジャージ洗って返すね」と言った時は大丈夫だと言われたけど、気にせずカバンに畳んでしまいこむ。

明日は残念ながらお菓子はナシだと伝えると丸井からブーイングがあったけどこんなことがあった日にお菓子を作る気になる方が不思議だよ。
晩御飯ですらめんどくさいっていうのに。

「みょうじさん、帰ろっか」

「……やっぱり?」

「何か言ったかい?」

「ナンデモナイデス」

「じゃあ、行こう?」

ふんわりと微笑む彼の笑顔はいつもの変わらないはずなのに、少し黒いものが見えた。さすが魔王。

テニス部員に再びお礼を言って、部室を出る。

門までの道を歩いてるなう。
幸村と並んで歩く日がくるなんて考えてもみなかった。

「そうだ、みょうじさん良かったら連絡先交換しない?」

「いいよー」

ポケットに入れていた携帯を取り出して、連絡先を交換する。
なんだか変な感じだ。

ちなみに、私のテニスの推しは幸村ではないことを今更だがここで宣言させていただこう。
私の推しは浪速のスピードスター。
幸村は美人だから目の保養的存在。

「ありがとう、連絡するね」

「待ってるね」

家までの道のりを歩きながらクラスの話を聞かせてもらう。
席替えをしただとか、クラスのどの子とどの子がいい感じだとか。

「今月まだ教室上がってないから上がろうかなあ」

「簡単においでよって言っちゃダメだと思うけど、気が向いたらおいで?」

「気が向いたら…だったら一生行かないかも」

「そりゃ大変だ」

そう戯けたように言うと、幸村も戯けたように返してくれて心がほっこり。

紙上で彼らを見ていた時には絶対に気づくことのできなかったことがどんどんわかってきて楽しい。

家の前まで送ってもらってバイバイをする。
また明日って言えるの嬉しいなぁ。