水やりしてた子の水がかかったということにしたけど、あの、この状況は何でしょう。
仁王の代わりに幸村が私の頭をふいている。
幸村ってこんなに独占欲強いの??
夢小説の中だけじゃなかったの?
「みょうじさんほんと気をつけてね?体弱いんだろう?」
「気をつけます…」
「幸村くんがここまで女性に心を開いてるのは珍しいですね」
やっぱり開かれてる??心開いちゃってます?この人。
こうなったら大人しくしておくしかないな。
「せんぱーい、3年の先輩が探してます…よ…」
丸井がお菓子のために保健室の扉を開けるが如く部室の扉を乱暴に開けるのは切原赤也。
おお、切原赤也だ。本当に頭もじゃもじゃだ。
まだ幼い顔をしているし、悪魔化もしてない純粋な赤也だ。かわいい。
あと、後ろから丸井が飛び込んできた。
「みょうじだー!」
「丸井くんだ」
「何でレギュラージャージ着てるんだよぃ?」
「水かぶっちゃったから仁王くんに借りてるの」
「で、幸村くんが髪を拭いてると」
「正解。そんな頭のいい丸井くんには今日のお菓子のあまりを差し上げましょう」
柳生くんが運んできてくれたカバンを手繰り寄せて、中からパウンドケーキを取り出す。
今日はマーブル模様のパウンドケーキ。
「柳生くんと切原くんもどうぞ」
「いただいていいのですか?」
「うん、ぜひ。仁王くんと幸村くんにはお昼にあげてるから」
「じゃあいただきますね」
「あの、」
「なんだい赤也」
髪が乾いたらしく、私が持ち歩いている櫛を使って髪をといてくれる幸村。
なにこの至れり尽くせり。これこそファンクラブに見られたら私はヤバイ。
「誰っすか」
「彼女は俺のクラスメイトだよ」
「で、俺はお菓子もらってんだ!」
納得したのか納得していないのかわからない顔をしながら私からパウンドケーキをちゃっかり受け取る赤也に思わず笑いがこぼれる。
「そうだ、みょうじさん今日は送っていくから待ってて。絶対にだよ」
そうだ京都へ行こう!みたいなノリで言われても困ります。
「そうじゃの、送ってもらいんしゃい」
「私も賛成です。」
さっきの校舎裏での出来事を知ってる仁王と柳生はあまり前のように賛成してくる。
私も2人の立場なら賛成するだろう。
「でも、」
「制服も俺の部活が終わる頃には乾くだろうし、レギュラージャージのまま帰るのはまずいだろう?」
「……おとなしく待たせていただきます。」