「あ、はい大丈夫です」

「いやいや大丈夫じゃないじゃろ」

テニス部のレギュラージャージを着た柳生の後ろからひょっこりと顔をのぞかせる仁王。
仁王もレギュラージャージを着ている。

「仁王くんだ〜、2時間目ぶり」

「2人はお知り合いですか?」

「まあな」

少しドヤ顔をする仁王を横目に、カバンを持つ。カバンは比較的無事らしく教科書はなんとか大丈夫そうだ。

「ちょっと待ち濡れっぱなしでどこ行くんじゃ」

「どこって…帰るんだけど」

「帰る…って濡れたまんまですか?!それはいけません!風邪をひいてしまいます」

「万年風邪引き野郎みたいな感じだからいいんだよ」

幸村にバレたら彼に迷惑しかかけないんだから私の中でなんとかすればいい。

「そういうわけにはいかんのぉ。」

そう言ったが早い、私を担いで部室棟のある方向へ移動し始めた仁王。
待て待て待て!!!柳生は私のカバンを持ってくれてるけど、待て待て待て!

▽▲▽

私の予感は悲しくも的中。
見事にテニス部の部室に連れ込まれ、仁王のレギュラージャージを渡されて着がえろと言われて部室に1人っきりにされた。

幸いにも下着やスカートは気にするほど濡れていなかったので上だけ下着の上に着させてもらって2人を呼び込む。

「これ使っていないタオルなので、使ってください」

呼び込んだ柳生の手には白いふわふわのタオルが握られていた。
仁王のレギュラージャージはやっぱり大きくてスカートが軽く隠れてしまいそうだ。

「ありがとう…」

「おまんも大変じゃの」

「もしかして2人とも見てた?」

「「バッチリと」」

あちゃー。
タオルを手に持ったまま呆然としていると仁王がわしゃわしゃと濡れた髪を拭いてくれている。
袖をくるくると折らせてもらおう。指が出てこない。

「幸村くんには内緒ね」

「でも……」

「柳生くんは優しいから黙ってられないかもだけど、私は黙っててほしい。仁王くんも面白半分で言わないでね?約束」

「プリッ」

初プリッいただきました。
本当に言うんだなぁなんて感動していると、ガチャリと扉が開いて話題の中心である幸村が入ってきた。

「みょうじさん?なんでレギュラージャージ着てるの?」

「ヒトチガイデス」

「仁王もなんでみょうじさんの頭拭いてるの?」

「ダカラ、ヒトチガイデス」

「状況を説明してくれるよね?」

逃げられないってことですか??