めんどくさいことに巻き込まれたくないって言っていたのはどこのどの人でしょう。
私だ。
さて状況を説明しよう。
月曜日の朝、朝というには少し遅いけど2時間目の始まり頃に学校に来た私は当たり前のように靴箱を開いたんだけど、上靴の上に果たし状が置いてあった。
あーあ、来ちゃったか"お呼び出し"。意外と早かったな。
幸村からタッパー返してもらってるところとか見られてたんだろうか。
女子の情報網は怖すぎる。
幸村たちにバレないようにご丁寧に放課後のお呼び出し。
うーん、前の世界ではお呼び出しなんて経験したことないから困った困った。
わたしが保健室登校だって有名らしいから靴箱にご丁寧に入れてくれたんだよね。そこは褒めてあげよう。
そういうわけで放課後に校舎裏へ行くと、先輩と他クラスの同級生の子が5〜6人ほどいた。
そして今現在ものすごい勢いで罵声を浴びせられている。
よくもまあそんな罵声のバリエーションがあるねって褒めてあげたくなるくらい。
定番の"ブス"やら"幸村くんに釣り合わない"やら沢山言われている。
中学生は元気だなぁ。よくそんな甲高い声が出せること出せること。
「聞いてるの?!」
「あー、うん」
「何その態度むかつく…!」
「ムカつかれてもこっちが困るし、とりあえずこれがバレたら幸村くんに嫌われるのはあんたたちだよ?」
「っ……」
「こんな子どもじみたことでしか敵を潰せないなら一生幸村くんには振り向いてもらえないよ。残念でした。」
「ねえ、お前立場わかってる??」
「わかってるわかってる。第一、幸村くんだって男の子だし、いつかは彼女も作って結婚だってするんだろうしいつまでも"みんなの幸村くん"で居られるわけないじゃん。幸村くんの幸せを阻止するわけ?」
「っ、うるさい!!」
あ、やばい。そう思った時には遅かった。
わたしの言葉に怒りがピークに達した女の子が近くにあったホースを手に取り、蛇口をひねり水を私にかけてきた。
ナイスヒット!
「ふん、ざまあみろ。これに懲りたら幸村くんに近寄らないことね」
水をぶっかけて満足したのかお決まりの捨て台詞を吐いて集団で去って行った。
ファンクラブだなんだって言ってるけど個人の欲望を満たすそれだけのものじゃん、非公式だし幸村たちにとっちゃ迷惑でしかないね。
はてさて今日は月曜日だ。
制服も昨日クリーニングに出して綺麗なはずだった。水をかけられるまでは。
明日までには乾くかな?家も近いし先生にだけはばれないように帰ろう。
今日はおかし作りどころじゃないな。
「大丈夫ですか…?」
「え?」
声をかけられて振り向くとそこには柳生比呂士が立っていた。