「情けないのは俺の方だよ」
「まちな、このままだとネガティヴ大会になるから辞めよう。澤村たちに似てきたって言われた理由がわかった気がする。確実にネガティヴ思考がうつだてきてるわ…あ、そうだ。」
まだ7時は少し明るくて自撮りがギリできるだろうと思って、携帯を取り出す。
「はい、チーズ」
無茶振りをしたため、慣れない顔をしている東峰が面白い。
そういや、写真を撮るのも初めてだ。
私たちはどんなカップル生活をしてたんだろう。
3ヶ月記念はこれで我慢する事にしよう。
ちょっと心がほっこりしてウキウキしている私の隣にはソワソワした東峰がいた。
「東峰どうしたの」
「あの、さ、みょうじって記念日とか気にしないんだと思ってたんだ。でも、清水に聞いたら、『我慢してるわよ。東峰のために』って言われたんだ」
「我慢とかじゃないよ。私がしたくてしてるの」
「でも、部活があるからって一緒に帰ることも、デートもできないし、記念日とか疎くて、クラスの他のカップルみたいなことできなくて。」
「私も疎いからいいんだよ」
そう嘘をつく。
だって、東峰がものすごく情けない顔をしてるんだもん。
こんな顔好きな人にさせたくない。
「私はバレーしてる東峰を好きになったの。だから、気にしないで?」
「でも、我慢させてるのは事実だからさ……………。今日誘ったのも記念日だからだし、あと、これ」
鞄の中から、男子高校生には似合わない可愛い小さい袋が取り出された。
すこしクチャっとなっていて、慣れてないんだろうなと微笑ましくなった。
「え、」
「3ヶ月記念。ネックレスなんだけど」
「え」
「清水にいいお店聞いて買ってきたんだ」
「恥ずかしかった…でしょ…」
「まあ、少しは…って泣いてる?!」
あまりにも嬉しくて、東峰がこんなにも私のこと考えてくれてたんだと思ったら本当に嬉しくて嬉しくて涙が溢れてきてしまった。
ぼやけた視界にアタフタしている東峰が見える。
「嬉しくて……ありがとう。大切にする。うちの学校ネックレス注意されなかったよね確か。毎日付ける。大切にする。大切にする」
「そんなに喜んでもらえるなんて思わなかった」
「あっ、でも私何も用意してない。東峰てっきり忘れてると思ってたし…」
「俺が黙って用意したわけだから、気にしないで。みょうじにはいつも我慢してもらってるから」
「そういうわけにはいかない」
東峰だけに何かしてもらうのは申し訳ない。
我慢してるのは事実だけど、記念日だから何かしてあげたい。
今まで私も放置してきたのは事実だけど。
「じゃあ……」としばらく考え込んで、東峰から提案されたことは、私をちゃんと家まで送り届けたいということと、手を繋ぎたいということだった。
「本当にこんなのでいいの?」
「うん」
「ならいいけど…。あ、私の家ここ。今日はありがとう。ネックレス大事にする。気をつけて帰ってね」
「また明日」
「うん、また明日」
手をひらひらと振って、東峰の背中を見送る。
しかし、本当に東峰は大きいなぁ。
手も大きかった。
思い出しただけで恥ずかしくなってきた。胸がいっぱいでご飯が食べれそうにない。
今日はダイエットということで晩御飯を食べないようにしよう。