全体練習が終わった後に、個人練習を始めたバレー部。
19時まで個人練習をするらしい。
今は18時だから、1時間ほどしかないみたいだけど。
東峰が練習している体育館に潔子に強制移動させられた。
ジャンプサーブを練習しているらしい。
「みょうじさ…そんなに見つめないでくれる…?」
「言うと思った。私も潔子にそうやって言うからやめたほうがいいって言ったんだけど」
「そっか…」
「私外にいるから、終わったら声かけて?」
「まって!居ていいから…何かあったら心配だから居て」
好きな男子に心配されてときめかない女子がどこにいる。
久しぶりに胸キュンを味わった気がする。
今日は潔子たちバレー部3年生に感謝しかないな。
「あさひさーーん!」
バンバンと打っていく東峰のボールをサーーッと登場して簡単に拾ってしまった西谷。
いつの間に来たんだ。
東峰ちょっとショック受けてるぞ。
トス練習をしたいらしい西谷にボールを山なりに投げる係をする事になった。
リベロってトスあげてもいいんだ、とか思いながらボールを投げる。
バレーについても東峰についても知らないことが沢山ある。
▽▲▽「そういや、旭さんとみょうじさんって今日で3ヶ月ですよね」
西谷は東峰より少しだけ早く上がるらしく、ダウンをしながら私に話しかけてきた。
「なんで西谷が覚えてんの」
「付き合い始めの時に旭さんに記念日聞いたら、ちょうど今日だったんで」
「さすがだね…。まあ、私も東峰もあんまり気にしてないんだけどね」
「みょうじさんそういうのお祝いしたりとか好きそうなのに」
「東峰の迷惑にはなりたくないからね。東峰そういうの疎そうだから」
そう西谷に伝えて、ジャンプサーブの練習している東峰に視線を送る。
このままじゃ付き合ってるのか付き合ってないのかもあやふやになって自然消滅しそうだ。
「じゃあ、俺失礼しますね!」
元気に体育館から出ていく西谷は、部活を全力で頑張った人とは思えないくらいだ。あの元気どこに残ってるの…。
西谷が出て行った後すぐに東峰がダウンを始めた。
コロコロと転がっているボールをカゴの中に拾うくらいのお手伝いは出来るな、と思ってボールを拾いに行く。
ダウンを終えた東峰がネットを片付けている。
なんだかマネージャーになった気分だ。
「みょうじありがとう」
「ううん、大丈夫だよ」
「じゃ、帰ろっか」
「うん」
そうでした。一緒に帰るために待ってたんだ。バレーをしている東峰に夢中で忘れてしまっていた。
西谷がさっき、「3ヶ月ですね」なんて言うから、記念日だから一緒に帰ろうっていってくれたのかと勘違いしそうになる。
東峰はそういうの苦手そうだから。
制服で並んで歩くのは初めてと言っても過言ではない。
何を話そうか、何を話していたかと考えていると、普段挨拶しかしてない事に気がついて死にそうになった。
これでカップルなんて呼べるのだろうか。
ついため息をしてしまう。
「みょうじ待たせてごめん」
「いや、なんで謝るの?嫌なら断ってるから」
「ため息ついてたからさ…」
「ああそれ…。自分が情けなくなっただけだから」
そう言って笑うと心配そうな顔に磨きがかかってしまった。