「潔子さんどこに行ってたんすか!」
「あれ、みょうじさん昨日ぶりっす!」
西谷と田中が真っ先に私たちに駆け寄ってきた。
さっきまで絶対にコート内を走り回ってたはずなのに、よくそんな元気があるもんだ。
私が体育館の中に入ってきて、びっくりしてるのは多分1年生だろう。
というか、東峰までびっくりしている。
新しいマネージャーの女の子が入ってる。可愛い。
「そうだね」
「でも最近、みょうじさん見かけないから元気か心配してたんすよ」
「ありがとう。西谷は部活楽しい?」
「もちろん!」
ニカッと笑う西谷はもう少しだけ背が高ければ女子にモテるんだろうなぁと残酷な事を考えたりした。
まあ、3年の年下好きにはキャーキャー言われているけれど本人は知らないみたいだ。
「清水に行かせて正解だった。最初は大地が行ってくるって言ってたけど、女子の方がみょうじは断れないってわかってたし、清水なら連れてきてくれると思ってたんだ」
「菅原は私の事がよくお分かりで」
「みょうじと旭は最近よく似てきたからわかるんだよ」
「いや、似てない似てない」
すこし呆れた顔で否定をすると、潔子や澤村にまで「似てる」と言われてしまった。
全く似てないと思うんだけど。
ちなみに、この話の中心の東峰は気まずそうな顔でこちらを見ているし、メガネのっぽくんには呆れられた顔をされている。
そんな事を話していると、コーチが戻ってきた。
バレー部のコーチは烏野のOBらしいけれど、こんな厳つい人を簡単に学校に入れていいのか…?となったのは5月の中旬だった。
放課後に金髪ピアスの人がバレー部の体育館に入っていくのを見かけて、潔子に聞いたらコーチだと言うんだからびっくりした。
「お前はこの部活の誰かの知り合いか?」
「まあ、知り合いは沢山いますけど」
みんながミニゲームをしている外で初めましてのコーチにものすごく不思議そうな声色で話しかけられた。
返事の内容に関してはとりあえず間違えではない。聞かれた事には答えたし。
「ここはボールが危ないから上のところ上がっておいで」と武田先生に促されて、上のところに上がる事にした。
そういや、あそこの正式名称知らないなぁ。
柵の間からブラブラと足を出して、横からミニゲームをするみんなを見つめる。
オレンジ頭くんは小さいからリベロかと思ったのに、当たり前と言わんばかりにネットから頭が出ていて驚いた。
「?!?!」
ガンッと柵にボールが当たって跳ね返った。
柵がなければ確実に顔面にヒットしていた。
「みょうじ!」
「大丈夫大丈夫。柵があったから」
東峰が打ったアタックがうまい具合にブロックされ、そのボールが見事に私の方に飛んできたみたいだ。
ワタワタとし始める東峰の背中をバシンッと叩く澤村。
しっかりしてくださいエースさん。
試合は再開されて、再びボールがコート内を飛び交う事になった。
ちなみに、新しいマネージャーの女の子もあたふたしていて可愛かった。