あー………とうとう放課後になってしまった。
今日は学校に来るなり心と澪にはニヤニヤされっぱなしだし、なぜか東峰は目を合わせようとしない。
なんで誘ったお前が照れてるんだ!と言いたくなったけど、私もなんだか恥ずかしくてたまらない。

部活が終わるまで教室で課題でもしながら待っていよう。
自販機でジュースでも買ってこようかな、と思い、鞄を持ってゾロゾロと教室を出て行く集団に財布だけを持って紛れ込むことにした。

ちなみに心と澪は朝、「3ヶ月おめでとう」と言ってくれた。なんで覚えてるんだ。
今日は2人とも部活があるらしく、私と一緒に東峰を待てないことを悔やんでいた。
いや、からかえないのを悔やんでいた。

東峰によると今日は19時には終わるらしい。
それまで課題が続けばいいんだけど。

お母さんに「今日は用事があるから少し遅くなるね」、と伝えると「夜道気をつけなさいよ」と言われた。
多分あの人は私の彼氏の存在に気づいていない。

自販機の前に着いて迷わずいちごオレを押す。
最近はいちごオレが私の中でブームなのだ。

ブスッとストローをさし口に挿して、チューっと吸い込みながら教室へと戻る。
バレー部が自販機の近くの体育館で練習しているけれど、邪魔にだけはなりたくないから我慢して教室に戻る。

途中の廊下でジャージに着替えた潔子とすれ違ったので「頑張ってね」と声をかけたら微笑まれた。幸せだ。

教室に戻って明日までの課題を終わらせようと古典のノートを開いたけれど終わっていたみたいだ。そういや授業中にやったわ…。

明日までの課題はこれだけだから本当にやることがなくなってしまった。
どうしようかな。と考え始めたところで吹部の音が校舎中に響き渡り始めた。

あと2時間かぁ、友達といればあっという間なんだけどな。
古典のノートをカバンにしまったところでガラガラっと教室の扉が開いた。

「潔子だ」

「なまえ、東峰待ってるんでしょう?」

「まあね」

「良かったら体育館で待たないかって澤村が。コーチとかもあんまり気にしないって言ってた」

「うーん、東峰の迷惑になるかもしれないからいいや!お誘いありがとう!」

「なまえだけがいっつも我慢してない?」

「そんな事ないよ!バレーしてる東峰が好きだし、迷惑にはなりたくないから」

「バレーしてる東峰が好きなら、来て?」

そう言うと私の机の横にかけている鞄を持って私の手を引いて体育館へと向かう潔子。
長い黒髪がとても綺麗だし、男子達の話題にならない日がないくらい人気がある。

「最近、なまえ元気ないなって思って、私が頼んだの。東峰のバレーしてる姿みてないんでしょ」

「まあ…。だって邪魔になるかもしれないし」

飲みかけのいちごオレを片手にちゃんと持って、すこし俯きぎみで潔子に手を引かれて、歩いているとすぐに体育館に着いた。

音があまりしないので休憩中だろう。
潔子が扉を開けたらみんなの視線が集まった。