なぜ私は潔子からメッセージが届いた時におかしいと思わなかったのだろうか。
見事にはめられた。

無事に閉会式を終え、3年の部で3位を勝ち取った私たちクラスは後夜祭のキャンプファイアに浮き足立っていた。
そんな中から、「潔子に呼ばれてるから」と抜けて体育館横へ来たら、旭が居たのだ。

「潔子は??」

「俺が清水に頼んでなまえを呼んでもらったんだ…。俺がLINE送っても読んでくれないだろうって」

「まあ………」

「急にあんなメッセージ送られて俺は納得できない」

「私の気持ちの問題だから…。」

「またそうやって自分で抱え込む」

「そういう性格なんだって。」

ここ数週間聞かなかった旭の声が聞けて少し安心したけれど、戸惑う自分もいて。

「なんで、距離置こうなんて言ったの?」

「旭が、」

「うん」

まだ優しく私の言いたいことを聞いてくれる。
まだ私のことを見てくれている。

「旭が、小桜さんを抱きしめてるの見たの」

「………えっ?」

少し気が抜けた声を出す旭。
小桜さんの名前が突然出てきてびっくりしているみたいだ。
下を向いているから、表情は見えないけど。

「私と旭が付き合ってるってばれた日の応援練習のあと階段の踊り場で。」

下を向いて見たことをそのまま伝える。旭の顔はまだ見えない。

「あ…それは、」

やっぱり心当たりがあるんだ。
言い訳なんて聞きたくなくて、反論しようとしたところで、今度は私が素っ頓狂な声を出す番だった。

「小桜さんが階段から落ちてきたんだ。それで下にいた俺が抱きとめる形になったんだよ」

「…へっ」

「だから、何もないよ安心して」

しゃがんだ旭の顔が、私の顔の下にある。
私の大好きな旭の笑顔だ。

「うん……、うん……!」

「不安にさせてごめん」

「私こそごめんね」

しゃがんで私も少しだけ旭の目線に合わせる。
久しぶりに見る旭の顔はとっても安心して、結局私は旭から離れる事なんて出来ないんだろうなぁと思ったりもした。

旭と出会って世界が輝き始めた。
よく聞く恋愛漫画の台詞だけれど、本当にそんな気がしてる。まるで、魔法みたいだ

「旭、好きだよ」

「うん、俺もなまえの事が好き」

ソレイユの魔法 F i n