体育祭の競技も無事に100m走を勝ち取り、今年ものんびり過ごせることが確定した。

ちなみに今は放課後の応援練習中。
応援団の人からダンスを教えてもらっている。
大会が近い部活以外は基本的に部活動停止で体育祭に気合いを入れる。
まあ、3年生は引退してるから関係ないことが多いけど。

バレー部は大会が近いから昼休みとかに応援団の人が教えるらしい。
応援団の人も大変だなぁ〜。

「…ちゃん!なまえちゃん!」

「へっ、あ、伽耶(かや)ちゃん」

「なまえちゃんぼーっとしてたけど大丈夫?体調悪い?」

数人のグループに分かれて、応援団の人に教えてもらっているのだけど、私たちのグループ担当は、比較的仲のいい佐倉伽耶ちゃん。運動部の活発な女の子だ。

「大丈夫大丈夫!ちょっと考え事!これで体育祭終わりなんだなって考えたら寂しくなっちゃって」

「ならいいんだけど、体調悪いなら言ってね?ちょっと顔赤いし…」

「もちろん!日焼けだと思うけど、気にかけてくれてありがとう」

考え事していたのは嘘じゃないし、バレー部が使っている体育館が近くにあるということが1番気が気じゃない。
またチラッとでも私が知らない東峰が見えたりしないだろうか。
ただのわがままだということは自覚している。
でも、嫌なんだよ。

「なまえ本当に大丈夫?ガチで顔赤いよ?日陰行って休んでたら?」

「んー、そうする。ちょっとぼーっとするし」

「私のお茶飲んでいいからね」

「ありがと」

日陰に座って応援練習を見る。
今はまだバラバラなのに、これが本番近くなると揃うから不思議だ。

「みょうじ?」

「あ、東峰」

「大丈夫?」

「生きてるから大丈夫だよ〜、名字で呼ぶの久しぶりだね」

「生きてるからって………、みょうじ無理だけはしないでよ?」

「はーい、」

ごくっとお茶を流し込む。
旭の顔を見て話すのはこの前のファミレス以来だ。

なんとなく気まずくて話が続かない。
どうしようと思っていると旭の方から話題を投げかけられた。

「みょうじさ、熱あるでしょ」

「ない」

「みょうじが頑固になりすぎるときは熱があったり体調悪い時だって、原田達が言ってた」

また旭に変なことを吹き込んで…!
心配かけたくないからいろんな事黙ってるのになぁ。
でも、迷惑だとは思わない。
私が言えないような事をそれとなく伝えてくれるあたりは感謝してる。

「大丈夫だって、東峰も練習戻って?」

「みょうじ」

「大丈夫」

「なまえ」

「?!名前…!みんないるのに、」

「関係ない、保健室行くよ」

いつもより真剣な顔をしている旭に「大丈夫」と伝えようとしたところで、ヒョイっと抱き抱えられる。
お姫様だっこだ。

「まって!降ろして!注目されるから!」

「下ろさない。なまえの体調の方が大事」

「とかいいつつ、あとから後悔するの旭だからね………」

びっくりした顔のクラスメイトにニヤニヤしてる心と澪。
あーあ、もう私は知らない。