「で、またなんで私が呼び出されてるの」
「1人で行くの緊張するんだもん」
「いや、あんたバレー部のみんなと面識あるでしょ」
「あるけど……」
そうです、バレー部の練習試合に澪を呼び出してるんです。
緊張はしますよそりゃ。
「第一、東京遠征で練習試合とか見たんじゃないの?」
「ないよ?むしろ、お手伝いに行ってたって潔子と仁花ちゃんのマネちゃんズしか知らない」
「は?東峰知らないの……?」
「言ってないし」
「コンビニで会ったってのは?」
「偶然だよ偶然。ばあちゃん家近かったし」
「なるほどね…」
少し呆れた顔をされたけど、「あんた達らしいわ」と言われた。
烏野まで呑気に歩いていく。
今日は宮城のとある高校と練習試合らしい。
とにかくバレーをしている旭が見れるのが楽しみだ。
アイスとか差し入れでもっていこうかという話にもなったけど、この暑さだ。持って行く間に溶けるし、溶けなかったとしても、保管する場所がないから止めにした。
▽▲▽体育館のそばまで行くと、ボールの音がたくさん聞こえる。
バレーをしている旭を見るのは久しぶりだなぁ。
「ほら、なまえ行くよ」
「あ、待って」
緊張して、扉の前で足踏みしている私を見かねた澪が体育館の扉を開けると、すぐそこに武ちゃんがいて、話しかけられた。
「原田さんとみょうじさん、応援ですか?」
そういや、澪の名字は原田だった。
名前で呼びすぎて名字を忘れてしまいそうになる。
「潔子久しぶりー!」
「澪もなまえも久しぶりね」
「仁花ちゃん久しぶり」
「なまえさん…!お久しぶりです!」
潔子と仁花ちゃんに挨拶をして、2階に上がる。
バレー部員たちはアップ中だったため話しかけることはできなかった。
「あのちっちゃい子新しいマネージャー?」
「最近入ったらしいよ、潔子が言ってた。とにかく一生懸命で可愛いの」
「もてそうだね〜」
「私が男なら確実に告白してた。」
「あー、私もだわ。守りたくなる可愛さってやつね。」
「あーあ、仁花ちゃんみたいに可愛くなりてーなー」
「可愛いものが勝つ世の中本当にクソだと思う」
仁花ちゃんについての話から、世の中が理不尽すぎる件について話が変わった頃に試合が始まった。
しかし、何度聞いてもボールが腕に当たる音は痛そうだ。
絶対に腕がもげる。
相手校も含めてみんなよく飛ぶな〜、審判よくアウトとか判定できるな〜、なんて思っていると、烏野のストレート勝ちで試合は終わった。
いつの間にこんなにバレー部は強くなったんだろう。
いつの間に旭はジャンプサーブを打つようになったんだろう。
当たり前だけど、私の知らない旭がコートの上には立っていた。