花火を見るために、小高い丘に上がってきた。
今年もなぜか誰もいなくて、特等席。
ベンチに座って、花火が上がるのを待つ。
「ねえ旭」
「ん?」
「旭はさ、なんで私と付き合おうと思ったの?」
「えっ、今?」
「なんとなく気になってさ。だって同じクラスになるまで接点なんてなかったに等しいじゃん」
「まあ、そうだけど」
少し困った顔をして「うーん」と考えこむ旭。
めんどくさい女だなぁなんて思ったりするけれど、私のことを知ったきっかけが知りたかった。
菅原に「旭はみょうじより先にみょうじのこと好きだったよ」なんて言われたんだから気にならないわけがない。
「俺がみょうじを初めて見たのは、入学式。一目惚れってやつだよね。そっから行事とかでなまえ見かけるたびにいいな〜って思ってて、同じクラスになれた時なんか奇跡かと思ったのに、告白されてものすごくびっくりしたよ」
「なんか、改めて聞くと恥ずかしいね…こんな私を好きになってくれてありがとう」
「いや、それはこっちのセリフだよ」
お互いに笑い合っていると、花火が上がり始める。
「きた!綺麗ー!」
「ーーーーーーー。」
「ん??旭何か言っ……!」
言葉が聞こえなかったため、旭の方を見上げて聞き返そうとすると、唇に旭の唇が降ってきた。
今の私の顔は真っ赤なんだろうな。
花火が終わるまで旭の顔が見れなかった。
「なまえ真っ赤」
「旭もだからね?!突然だからびっくりした……」
「嫌だった?」
「嫌だったら、あの時に逃げ出してますー」
「よかった」
駅前まで送ってくれるらしい旭の隣を歩きながらさっきのキスについて話している。
とにかく驚いたし、びっくりした。
あ、どっちも同じ日本語だ。
そうしていると、いつの間にか人がごった返す駅前へと着いていた。
「本当に家まで送らなくて大丈夫?」
「大丈夫大丈夫。お父さんいないけど、うるさいお母さんいるから…」
「それより、なまえの安全の方が心配だよ」
「大丈夫大丈夫。襲われたこととかないしなんかあったら電話するから」
「電話ないこと祈ってる」
「家帰ったらLINEするね」
送ると言ってきかない旭を説得して駅前で別れる。
次はいつ会える?と聞きたいところだけど我慢だ。
あー。我慢だなんて私が言っちゃダメなのに。しっかりしなくちゃ!
最近は澤村にまで心配され始めた。
「旭には言いたいことちゃんと言えよ」って言われた。
情緒不安定すぎるから、そろそろ女の子の日になるんじゃないかな。なんてのんきに考えたりする。
帰ったらゆっくりお風呂に浸かって、ゆっくり寝ることにしよう。
それがいい。