しかし、いざ好きな物の話してと言われても何を話せばいいのかわからない。
「あー…何話そう…?」
旭は「今まで俺らバレーの話ばっかしてたんだな」なんて笑う。
その通りすぎる。
バレーのことなんて全く知らなかった私が、ポジションやルールを少しずつ覚えてきているくらいだ。
部員の名前とポジションまで最近覚えてしまっている。
1年生の子はあまり話したことないから、覚えているかと言われたら自信はないけれど。
「いつも一緒にいる子たちとしてるような話でいいよ?」
「んー、引かない?」
話していることの例を出せない理由としては、旭のことについてや下ネタばかりということが挙げられる。
「??引かないけど…」
「旭のこととか……」
下ネタのことは置いておいて、旭のことだけ伝えることにした。
「……………」
「引いたよね!ごめん!忘れて!」
「引いてない引いてない!!びっくりしただけ」
「ならいいんだけど…。まあ、心たちが面白がって『どこまで進んだの?』とか聞いてくるんだけど…ね。あとは、今人気の俳優さんとか、可愛いモデルさんとかかな」
慌ててフォローをする。
一応、昨日だって最近人気の俳優さんの話もしたのだ。
少女漫画の実写化映画にたくさん出演している俳優さんだ。
少女漫画はキュンキュンする。
こんなふうなことしたいなと思わなかったわけではないけど、現実的にはありえないんだろうねぇと話をしていた。
そのあとに「東峰とどこまでいった?」となったのはテンプレだ。
「あとは、本当にくだらない話。英語が難しいだとか、あの先生は今日も面白かったとか」
「うんうん」
「あ、そろそろ花火の時間だね。さっき言ってたとこ案内するから行こ!」
穴場スポットに移動する途中には結局バレーの話で持ちきりになった。
私が旭からバレーの話を聞くのが好きなだけ。
あ、そうだ。
学校では名字呼びにしようねって決めたんだった。
付き合ってるって知ってる人は少ないし、少ない方が都合がいいから。