「胸って揉まれたら大きくなるんでしょ?」

「心?!?!さっき注意されたばっかりじゃん!」

思わず飲んでいた飲み物を吹き出しそうになる。
隣の澤村たちは一斉に咳き込み出した。

旭にいたっては思考回路停止してそう。
これはもう課題どころじゃなさそうだ。

「いやー、ほんとに大きくなるのかなって思ってさ」

「でもあれ大きくならないって友達が言ってたよ」

「澪まで何言ってんの……。私ドリンクバー注いでくる。」

心と澪のこういう話は詳しすぎて怖くなるときがある。
誰かの家とかでの会話とか、周りに人があまりいない時とかならまだしも、隣に同じ学校の男子が、知り合いがいるというのに…。
尊敬しそうになる。してはいけないけど。

メロンソーダのボタンを押しながら、コップの中に注がれる緑の液体をながめる。
緑の液体って我ながら言い方がひどいなとは思う。

旭たちも興味がないわけではなさそうだし、バレー部の部室にはアイドルのポスター貼ってるって潔子からのタレコミもあった。

まあ、名前呼びすらできない私たちにとっちゃまだまだ先な話なわけで。

自己解決して席に戻ってくると、旭が机に突っ伏して死んでいた。

「え?!何してたの?!」

「別に〜??男子の中で唯一彼女持ちの東峰にどこまでなまえと進んだか聞いてただけだけど?」

「特に何もないから。むしろ何もなさすぎて心たち心配してたじゃん、旭殴りそうだったじゃん」

「なんでみょうじはそんな冷静なんだ?旭はこういう話まあまあ苦手なのに」

旭をつんつんとシャーペンの尖った方でつつく菅原に不思議そうな顔をされる。
澤村も「そこは似てないよな」なんて言ってる。
どこも似てないから。

「心と澪はそういう話好きだから、色々聞かされてたら慣れたの…。澤村とかこういう話好きそうだし旭にめっちゃしてそうだなぁとか思ってたんだけど」

さっき注いできたメロンソーダをストローで飲む。
澪も「澤村は巨乳好きそうだよね」なんて言いながら乗ってきた。

「あ、でもバレー部で一番エロいのは確実に菅原だと思ってるから私」

「へ?!」

この話の矛先が自分に向いてくるなんて思っていなかったであろう菅原が変な声を出した。

「わかるわかるー!田中くんと西谷くんはああ見えて純情そうだし、1年生くんたちは興味なさそうでしょ?そうなると確実に菅原か澤村だよね〜」

東峰はちょっとからかっただけでこれだし、と視線を旭に送る心。
旭は本当に弱そうだ。

夏休みの計画を立てていたはずなのにいつの間に下ネタ話になったのだろう。

「広げといてくださいなんだけど、下ネタ終わり終わり!澤村たちは課題して…」

再び強制終了させるけど、心と澪はまだ話し足りないらしく、ヒートアップする下ネタを私はシャットダウンすることに決めた。
ここまでくるとさすがについていけない。
たまにこちらに矛先が向いてくるけど。

そして、頑張って夏休みの話に戻して、男子たちには課題に専念してもらうことに成功した。

帰りは旭に送ってもらいなと言われたけれど、今日はお父さんが家にいるので遠慮した。

私もちゃんと課題やらなきゃな〜なんて思いながらベッドに転がる。
心たちとのプール楽しみだな〜。