あの後、家に着いて直ぐに溶けたハーゲンダッツを冷凍庫の中に入れているとお兄ちゃんが「どうせ彼氏と話し込んでたんだろ」なんて言ってくるもんだから、お母さんたちに聞かれていないかアタフタしたけれど、もう寝てしまったらしく大丈夫だった。

この日から合宿中に旭に会うことはなかったけれど、とりあえず名前呼びをできたことが一番大きな進展だったと思う。

今日のお昼はバーベキューをするらしいため、これが最後のご飯作りになる。

朝ごはんを作っている途中に、おばちゃんたちに「ありがとう元気でね」と言われて少し寂しくなったりもした。

今日は最後だし片付けも手伝おう。

そういや、私たち家族も今日の夕方に宮城に帰る。
明日は心と澪から呼び出しがかかっている。昨日行われたLINE会議で決まった。
埼玉であったことを報告しろと言われた。

皆んながご飯を食べている間はこの前待機していた裏口で待機をする。
おばちゃん達に「いいのかい?」と言われたけれど、これでいいのだ。
これでいいのだってよく言ってたアニメあったよなぁなんてぼんやり考えて
いると、裏口が内側から開けられた。

「潔子だ」

「なまえ、皆んなご飯終わったから入ってきてって。マネージャーみんなでお礼言いたいから」

「お礼とかいいのに…」

「そういうわけにはいかないから」

ほら、と手を差し出されたのでその手を握り食堂内へと入ると各校のマネージャーさん達がいた。

「1週間ありがとうございましたとか、「おかげで乗り切ることができました」なんて言われたりしたけど、私は大したことはしてないんだけどなぁと思ったり。

午前練が始まるらしく、みんなは体育館へと戻っていった。
潔子に「また宮城でね」と手を振ると「もちろん」と笑顔で返してくれた。

お昼はバーベキューとかどこの青春だよって思うし、青春だよな、とも思う。
成長期の男の子ってどれくらいお肉食べるんだろうなぁ。

お肉が食べたくなってきた。
今日の晩御飯は焼肉を希望しよう。そうしよう。

おばちゃん達にお礼を言って、森然を後にした。
まだ1週目なのにものすごく楽しかったなぁ!夏休みの思い出だ。
課題ちゃんとやらなきゃ。

▽▲▽

「ということで、なまえの夏休み報告会を行いまーす」

「ドンドン パフパフー」

近所のファミレスが私たちの会議の場であって、いつもの場所だ。
ドリンクバーだけで何時間も話せるからお財布にも優しいし、楽しい。

「そんな大したことないから…」

「埼玉で何があったかぜーーんぶ話してね?」

「時間はたっぷりあるからゆっくりでいいからね?」

ちゃんとばれずに宮城に帰ってきた私は心と澪に呼び出されてファミレスにいる。

「とりあえず、コンビニで遭遇したでしょ?あとお父さんが持ってきたスイカを持って行ったでしょ?まあ、そんくらいだよ?」

「え??もっとなんかあるでしょ?」

「あ、東京の音駒にモヒカンがいた」

「モヒカン?!何それ気になる!写真ないの?」

「残念ながらないでーす」

「澪!話ずれてるから!」

音駒のモヒカンの話でなんとかごまかせるかと思ったのに…!
パーカー貸してもらったとか、名前で呼んだとか、手つないだとか恥ずかしくて言えるわけないでしょ…!!

カランカランとお店のドアが開いて、お客さんが入ってきた。
私は背中を向けているため誰が入ってきたかわからなかったけれど、心の

「澤村たちじゃん」

という声で3年生軍団が来たんだなと悟ることができた。

これはもうにげられない。