「ちょっと遅れたごめん!」
「大丈夫。わざわざ持ってきてくれてありがとう」
「袋とかに入れたかったんだけど、おばあちゃん家だからいいのなくて…」
「全然!使うし大丈夫」
「なら、よかった」
自分の中で予想していた時間より少しだけ時間がかかってしまったのは少しだけ悔しい。
「じゃあ、私コンビニ寄るから……。ゆっくり休んでね」
と、言って回れ右をしたところで、ガシッと右手首を掴まれた。
「俺、も、コンビニ行ってもいい?」
「私は大丈夫だけど、東峰は…?」
「もちろん大丈夫。行こう?」
右手首を掴まれていたはずなのに、いつの間にか手を繋いでいた。
恥ずかしいなこのやろう!!
ここをお父さんに見られたらやばいだろうなぁ。
「合宿楽しい?」
「楽しいよ。もっと頑張らなきゃって思うし」
「無茶だけはしないでね?」
「大丈夫大丈夫」
「東峰の大丈夫は信用ならない。休部してた時もひたすら大丈夫しか言わなかったし」
「それは…………」
気まずそうな顔をする東峰を見上げる。とりあえず背がでかい。
周りの女子の中では大きい方の160cm近い私でも結構見上げる。
仁花ちゃんにしたらものすごく怖く見えるんだろうなあ。
「でも、東峰の大丈夫に救われることはあるからね」
「そっ……か、よかった」
コンビニに入って、お兄ちゃんに頼まれたハーゲンダッツと自分で食べたいパピコをレジへと持って行って会計をすませる。
お兄ちゃんは明日、東京の方へ帰るらしい。おばあちゃん家が静かになるからありがたい。
コンビニからでたところで、パピコを袋から取り出し、1つを東峰に渡す。
「ここまで来てくれたお礼」
「そんなのいいのに…」
「パピコいらないの?」
「いる…」
「はい。」
コンビニの駐車場の車止めに座って2人でチューチューパピコを吸う。
これ通行人から見たらおかしなカップルだろうなぁ。
田舎のコンビニは駐車場が広いから、店の中から見えないであろうところに座っている。
「黒尾にさ、『お前、彼女に我慢させてんじゃないのか』って言われてさ」
「突然何言い出すかと思ったら…それこの前も言ってたよね、」
「うん…。みょうじは俺より全然大人っぽい考えできるし。我慢ばっかさせて情けないなって」
「そんなの気にしないで?我慢なんてしてないし。我慢してたら今だってこうやってコンビニに一緒に来てもらってないよ」
「本当のこと言って?」
座っているため、少しだけ目線が同じで、目の前に東峰の顔があるのは久しぶりだ。
「本当のこと……かぁ、」
パピコがいい具合に溶け始めている。
ハーゲンダッツ溶けてるだろうなぁ、ごめんねお兄ちゃん。
冷凍庫に入れて固めてくれ。
「別に今までのことが全部嘘だっていうわけじゃないよ?」
「うん」
「確かに、記念日にプリ撮ってお祝いしたり、デートしたり、お昼も一緒に食べたり、制服デートしたりしてみたいなって思ったことは何度もあったし、心や澪と話してる時とかは考えたりするけど、それ以上にバレーをしてる東峰を、旭を見るのが好きなの。だから、気にしないで」
溶けてきたパピコを喉に流し込む。
ここまで本音を話すの初めてだ。
この暑さは夏の暑さじゃないことだけはわかっている。