英里ちゃんの「森然のOBの方からスイカの差し入れいただきましたー!」という言葉に振り向いたみんなの目がキラキラしている。

「ちゃんと冷えてる!すげぇ!」やら「おれ今年初スイカー!」とわちゃわちゃしながら食べている。

仁花ちゃんも無事に無傷でゴミ袋を持ってきてくれた。
この子、何もないところで転けそうだなぁ。可愛い。

当たり前だけど、みんな背が高い。
そして、髪型とか諸々個性的すぎる。

「あれ!みょうじさんじゃないっすか!旭さん!!みょうじさんです!旭さん!」

「ほんとだ!みょうじさんだ!どうしたんすか?」

潔子の後ろにそっと隠れていたのに、見つかったらめんどくさい部員1位2位を争う西谷と田中に見事に見つかった。
そして、東峰まで見事に呼び出してくれた。

「西谷、田中久しぶり。スイカ持ってきたのが私のお父さんなの。それでついでにスイカ運びのお手伝いしてるの」

「そうだったんすか!ありがとうございます!」

口の周りにスイカをつけて、笑う西谷の顔をクラスの西谷ファンに見せてあげたい。
これは確実にファンが増える。

そして、田中と西谷と一緒にいたモヒカンがワナワナと震えている。
ちょっと怖い。

「虎どうした?」

モヒカンは虎というらしい。

「女子が増えている…!烏野の女子はレベルが高すぎだろ…!」

「そーだろそーだろ!でも、みょうじさんは旭さんの物だから手だしたら俺が黙ってないぜ!」

「なんで西谷が黙ってないのよ。というか、あっさり私と東峰が付き合ってることバラさないで…マネージャーさん達にも内緒にしてたんだから…」

幸いにもバラバラに分かれていたため、潔子以外のマネージャーさんにばれることはなかったけれど、西谷の声がまあまあ大きかったので、周りにいた選手たちには聞こえてたかもしれない。

「虎」と呼ばれた男の子は「付き合ってる……?彼女……?彼女………?」とスイカを片手にブツブツとつぶやいている。
この子は女の子に耐性がないのか?

「みょうじ」

「東峰。あと澤村と………どちらさまですか」

さっき西谷に呼び出された東峰がスイカを片手に澤村に背中を押されてこっちにやってきたのだけど、澤村の隣でニヤニヤして楽しそうな顔をしているツンツン黒髪男は何者だ。

モヒカンは西谷たちに向こうに連れて行かれていた。
潔子も潔子で「東峰が来たから」と言って仁花ちゃんの方へ行ってしまった。

「烏野のエースくんの彼女が来たっていうから見に来たけど、可愛い系なんだね。」

「?!」

びっくりして東峰の後ろに思わず隠れる。
残りのスイカは田中に渡しておいたので、手が空いていて本当に良かった。

「みょうじ、これ音駒のキャプテンの黒尾」

はぁ、とため息をついた澤村がツンツン黒髪ニヤニヤ男の説明をしてくれる。
音駒……ってことはGWに烏野の練習試合したところか。
それにしても、威圧感がすごいな。
東峰より少しだけ大きいみたいだ。

思わずぎゅっと東峰の服の裾を掴んでしまう。

「ど、どうも」

「そんな怖がらないでよ〜。取って食ったりしないから」

「いや、怖いです。」

「どっちかというと、烏野のエースくんの風貌の方が怖いでしょ」

「………まあ、それは一理ありますけど」

「一理あるの?!?!」

「いや、あるから。東峰の第一印象絶対"怖い人"だからね」

「みょうじもそこまでにしとけ、旭がしょげてる」

「ごめん東峰……」

「いいよ、大丈夫。みょうじもスイカありがとう」

「どういたしまして。あ、そうだパーカーもう乾いてるんだけど、今日の練習終わりとか会える?返したいんだけど」

さっき携帯を確認したら、従兄弟のお兄ちゃんからパーカーもう乾いたぞと連絡が来ていた。

「たぶん大丈夫だよ。練習終わったら連絡する」

「わかった、待ってる」

こんな会話をしている私たちを見ていた黒尾が爆弾を落としてきた。

「お前らなんで名字呼びなの?」