あれから結局ご飯も食べれなくて少し母親に心配されたけれど、なんとか逃げ切った。

もらったネックレスは、蝶の形をしたもので、以前に潔子に「これ可愛いよね」と話したことがあるものだった。
潔子もよく覚えていたものだ。

明日、バレー部の3年生に会ったら絶対にお礼を言わなきゃならない。

とりあえず、眠れそうにないけれど、寝ることにしよう。
心と澪には明日会って報告しよう。

▽▲▽

「……よしっ」

教室のドアを開ける前に、気合いを入れる。心と澪に質問攻めにされそうだからだ。
まあ、第一ボタンを開けてリボンをつけているため、あまり目立たないから気づかれにくそうだけど。

「なまえおはよう!昨日はどうだった!」

教室のドアを開けたとたん、待ってましたとばかりに目をキラキラさせて、早く座れとジェスチャーをする。

「おはよう…勢いありすぎ…。一緒に帰って、なんか3ヶ月記念日のネックレスもらって、手つないで家まで送ってもら……?!え?!」

昨日あったことをゆっくりと報告しおわると、ワナワナと震えだす心と澪が目の前にいた。

「ネックレス見せて」

「え、今つけてるこれ…」

「東峰緊急招集。あいつ今朝練?」

「待って待って!!朝練だとは思うけど、何するの」

ガタッと澪が立ち上がり、体育館に今にも駆け出しそうだったので、急いで捕まえる。

「3ヶ月何もなかったあんたたちが急に記念日祝い始めたり、手を繋いだりしてさ、本当に今日槍降るんじゃない?」

「まあ、それは私も思うけどさ」

筆箱を鞄から取り出して、1時間目の授業の準備をする。

「あ、あと、菅原に『旭に似てきた』って言われた」

「それは菅原に完全に同意だわ。異論は認めない」

うんうん、と頷く心と澪。
私はそこまで東峰に似てきたとは思えないんだけどなぁ…

小首を傾げていると、話の主役の東峰が朝練を終えて教室へとやってきた。
せめてもう少し遅くきてほしかった。
心と澪は東峰をからかいたくてからかいたくてウズウズしているから。
多分、朝も澤村や菅原たちにからかわれたんだろうけど。

「ごめん東峰。」と心の中で謝りながら、ニヤニヤしながら東峰の席に向かう心を見つめていた。