体育でのレシーブを見て以来、余計にうるさくなった黒尾鉄朗。
ちなみに今は夏休み前。
テスト期間と夏休みの間というまさに絶妙な期間である。
そろそろ本気で諦めてくれないだろうか。
「一回見に来るだけでいいからさぁー」
「………一回だけだよ?もううるさくしない?」
「おお!やっと来てくれるか!」
「あまりにもうるさいし、3年間ずーっとつきまとってた黒尾の神経の図太さを讃えてあげるのよ」
1度だけでも見に行けば、黙るかと思ったら大間違いであった。
「明日から合宿だから、よろしく」なんて言われてしまった。
まちな。本気でまちな。
「合宿の手伝いするなんて言ってないよ?!」
「まあまあ、今回から新しい奴らが増えるんだよ。」
「へえ」
「宮城の烏野ってとこなんだけどさ、面白い奴らが揃っててさぁ〜」
「ごめん。無理だ。烏野は無理。また今度ね」
「は、ちょっと待てって」
「烏野は無理なの。ごめんね、」
何が起こったのかわかっていない黒尾を背に帰路につく。
ごめんね、烏野だけは無理なの。
▽▲▽
「私さ!昨日無理だって言ったよね?!なんで連行されてんの?!軽い誘拐だよこれ!」
「ちゃんとおばさんには許可取ってるから誘拐じゃねーよ」
いや、私何も聞いてないよ!!何してんのお母さん!!
なんで黒尾と仲良くなってんの?!
とりあえずLINEをいれたが、用意した覚えのない荷物がお母さんがグルであることを物語っている。
コンビニに行こうと家を出たところで黒尾と研磨、あと夜久くんに捕まり、そのままずるずると学校に連行された。
「なんでバレー部のみんなは驚いてないのよ…」
「事前に俺が伝えてたからな」
「夜久くんもなんとか言ってよ……」
「俺も止めたんだけど聞かなくてさ…」
夜久くんの顔から疲労がうかがえる。
きっとなんとかしてくれようとしてくれたんだろう。
「ごめんね…お疲れ様…」
お母さんから来たLINEには「そろそろ観念しなさい。」と書かれてあった。
頑張って忘れようとしてるのに、なんでなのかなぁ。
「で、どこに行くのこれから」
「今回はウチだから、移動しなくていいんだよ」
「あー、今回はウチなの?」
「みょうじってなんだかんだでウチの部のこと把握してるよな」
「3年間毎日のように黒尾からバレーの話聞かされたら嫌でも覚えるわよ」
「クロ、そろそろ諦めたら?なまえ嫌がってるじゃん」
「研磨お前いつの間に呼び捨てにしてんだよ」
「え、私がいいよって言ったの。上下関係とか嫌いだし」
東京にいる限り、彼に会わないと思ってたのになぁ。
神様はいじわるだ。
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