気がつくと、君と離れて3年が経っていた。

離れて、といえば聞こえはいいけれど、私が彼から逃げてきたと言ったほうが正しい。

ただの幼馴染で、少なくとも私には恋愛感情なんてなかった。

中学の卒業式以来会っていないし、連絡も取っていない取ろうとしていない。

なぜ逃げたのかと言われれば、単純な話で。
彼との共通点だった"バレー"を私が捨てたから、捨てざるをえなかったからだ。

病院から激しい運動を控えるように勧められたから。
命に関わるような話ではないけれど、無理し続けるといけないと言われた。
普通に生活する分にはなんともないし、体育も無理のない程度ならなんとかなる。

でも、彼のそばにいれば私はバレーから離れることができない。そう思ったから、バレーを忘れるために宮城から東京に逃げてきたのだ。

一部の友人にしか伝えてなかったため、宮城の友人間では私が失踪した!と噂が立ったと聞いたり聞かなかったりした。

さて、つい先ほどバレーから離れるために東京にきたと説明したけれど、私が進学した音駒高校はなんの因果かバレーが強かった。
いや、最近余計に強くなったというほうが正しいんだろう。


そして、英語の先生は呪文を唱えるのをやめてほしい。
そんなことを思っていたら、授業終了のチャイムがなった。

お分かりでしょうが、私は4時間目の英語の時間に寝てました。
さあお昼ご飯だ。


「なあみょうじ。そろそろマネージャーやらね?」

「やらないって言ってるでしょ!私はもうバレーはしないし見ない!」

高校3年間同じクラスの黒尾鉄朗が毎日のようにバレー部に勧誘してくる。
なぜ私は音駒高校を受験したんだ。過去の私を本気で呪いたい。
3年間もご苦労様。でももう高校生活も終わるんだから、私じゃなくてもいいじゃないか。

「あー!もううるさい!ハウスハウス!」

「俺は犬じゃねーし」

「猫でしたね!お疲れ様でした!」

3年間こんなことを続けてしまっていたため、黒尾に対する態度は酷くなる一方でクラスの名物にまでなってしまっていた。

クラスメイトから「またコントが始まった」とまで言われる始末。こっちはやりたくてやってねーよ。

おっと口が悪くなってしまった。気をつけよう。

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