泣きぼくろくんの名前がスガだとわかったところで黒尾に呼ばれた。
「みょうじ〜」
「なに?ちょっと待って」
「俺より澤村くんのほうがいいわけ〜?」
「彼氏みたいなこと言わないでくれる?とりあえず大地の方が大事だから」
ドシっともたれかかってくる黒尾を引き剥がしながらまたコントだと言われかねないことをする。
本気で嫌ではないがTPOを考えて欲しいものだ。
「で、みょうじはちゃんと話ができたのか?」
「できました…お騒がせしました!」
「じゃあマネージャーやってくれ」
「なにがじゃあなの……」
「みょうじがバレーを避けてたのは澤村とのイザコザが原因だろ?仲直りしたならもう避ける理由はないだろ?」
もうバレーはできないってことに変わりはないんだよ黒尾。
私はバレーがしたいんだよ。跳びたいんだ。
大地がレシーブしてる姿を見て思い出したんだ。
小さい頃から一緒にバレーをやってきたこと、中学では結の前で飛んでいたこと。
仲間を信じて飛んでいたことを。
「マネージャーやったとしても、あと数ヶ月で引退だし、一応受験生だから遠慮しとく」
笑っていつも通りの口調で言えただろうか。
黒尾だけでも誤魔化せただろうか。
「教室に忘れ物したから取ってくる!」
黒尾は変なところで勘がいいから気づくかもしれないから、足早にこの場を離れる。
結に久々に連絡しよう。話を聞いてもらおう。
まだバレーに対しては未練があるなぁ。
情けない。
少し溢れる涙を押し込んで、教室へと走った。
▽▲▽宮城へと帰る烏野の皆んなを見送る。
次は夏休みだなって話をしている黒尾を研磨の隣から見つめる。
大地と仲よさそうに話している。
「なまえはもう隠れなくていいの?」
「うん、大地からはね。」
「?」
バスに乗り込む潔子ちゃんと仁花ちゃん、そして大地に手を振る。
次はいつ会えるのかな。
黒尾からどうやって逃げようか、と考えているあたり、私はまた同じことを繰り返そうとしているんだろうなぁ。
ぼんやりと考えていると、目の前に黒尾の顔があった。
黒尾の………顔?!?!
「うおっ!」
「ヒャッヒャッヒャ、何て声出してんだよお前」
「黒尾の顔が目の前にあってびっくりしたんだって」
「俺はお前のこと離す気ないから」
どこの少女漫画の台詞だよ。
そして黒尾の物になった覚えはない。
「黒尾の物になった覚えはございません」
「夏休みの合宿もよろしくな」
「やらないからね」
「「よろしく」」
「研磨も夜久くんもなに言ってるの!やらないからね!!」
とりあえずまた黒尾から逃げる生活が始まるのであった。
おとなしく過ごさせてくれ!!
Chapter 01 Fin