結果は負けだったけれど、とても楽しかった。
少しだけ昔に戻れたような気がした。

「みょうじ足は大丈夫か?」

「んー、ちょっと痛いけどほっとけば治るから大丈夫」

「本当に無理だけはするなよ?」

「大丈夫大丈夫」

トントンっと足を叩く。
体育のあとにあるような痛みだからなんともない。

「なまえちゃん」

「潔子ちゃん!」

「すごくかっこよかった。足痛むみたいだけど大丈夫?」

「体育の後とかにある良くある痛みだから、大丈夫だよ」

「ならよかった」

ホッとしてニコッと笑ってくれた潔子ちゃんは、烏野の坊主くんたちが崇めているように、本当に女神に見えた。

山本くんやリエーフくんがものすごく質問攻めをしてくる。

私が本気でバレーを出来るだなんて思っていなかったみたいだ。
まあ、体育もサボりがちな私だし、体育祭も病気を理由に楽な競技に逃げてたし。
運動しそうにないんだろうなぁ。

「中学の時に少しだけやってたって言ったでしょ?」

「いや、でもすごいっす!」

「ありがとう。じゃあ、片付けしようか」

今回の合宿はこれで終わり。
次は夏休みに入ってすぐの森然での1週間合宿。

まあ、私は今回こっきりだけだから関係ないのだけれど。
結局、大地と話をすることが出来なかったなぁ

「仁花ちゃんドリンクボトル洗いに行くの?」

「は、はい!」

「じゃあ、一緒に行こー!」

ドリンクボトルを洗いに行こうとしている仁花ちゃんを捕まえて水道へ向かう。
人見知りなのかあまり話してくれなかったので寂しかったりする。

「音駒の人たちから変なことされてない?」

「モヒカンとトサカには驚きましたけど、大丈夫です」

「山本くんと黒尾か…あの人たちいっつもあんな感じだから…ごめんね」

「い、いえ!!めっそうもないです!」

ドリンクボトルを洗いながら、仁花ちゃんがバレー部に入ったきっかけとかを聞くことが出来た。
烏野の2年生は潔子ちゃんのことが大好きだということも聞いた。

「谷地さんいた!清水が呼んでる」

懐かしい声が聞こえ、仁花ちゃんと振り向くとそこには大地がいた。

「は、はい!あっ、でも…」

「いいよいいよ!あと少しだから、行ってきて?持っていくし」

「お願いします!」

ぺこりと深々とお辞儀をして、体育館へと走っていく。可愛いなあ。
私もあのくらい可愛かったら、性格すらも違ったんじゃないだろうか。
もっと素直に大地に話すこともできたんじゃないか。

「なまえ」

懐かしい声が聞こえてきた。

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