「みょうじさんって音駒のマネージャー?」

「えっ、違いますけど…」

「黒尾となかいいんだね」

「3年間クラス同じなんで…」

昼休憩が終わる直前に干していたタオルを取り込みに行くと、烏野の泣きぼくろさんに絡まれた。
大地のこと呼び捨てにしてたから多分、同い年だろう。

「食堂での話聞いちゃったんだけど、大地と同じ中学だったんだって?」

「あ、はい」

「俺も3年だから敬語じゃなくていいよ。」

「わかった。あ、大地と話をしろって話なら無駄だからね。」

「いや、大地何も言ってなかったよ。ただ、大地がみょうじさん見たとき、ものすごく気まずそうな顔してたから」

「そっか、」

まあ、連絡すら取らなかった幼馴染、幼馴染ともう言えないのかもしれない。
その知り合いと言うべき立ち位置の人の話なんてしないよね。

私も避けていたけど、避けられる側になるととても寂しいな。
朝引っ込めたはずの涙がポロポロと溢れてくる。

「?!みょうじさん?!」

「ごめん、なんでもない!もう練習始まるでしょ?体育館戻っていいよ。気にしないで」

慌てる泣きぼくろさんの背中を押して練習に戻るように伝える。情けない。

自分がしていたことなのに、いざ自分にされるとものすごく辛いものがある。

体育館からボールの跳ねる音がする。
練習が始まったみたいだ。

黒尾達には申し訳ないけど、しばらくここにいさせてもらおう。
こんな顔では仕事にならない。あと、タオルもお借りしよう。

コンクリートの上に座り込む。

元々バレー部のマネージャーでもなんでもない部外者だから、サボろうがどうしようが文句は言われたくない。

人としてマズイことを考えてしまうくらい、どうしようもなくなってる。

なんで、私はバレーを捨てられないんだろう。
なんで、バレーが私につきまとうの。
私があなたを選んだだけなのに。あなたが私を選んだわけじゃないのに。

今朝打ったボールの感覚が忘れられない。
朝は夜久くんは何も言わなかったけど、音くらいは届いていたはずだ。

「はぁ………」

とりあえず涙は引っ込んだ。
ひどい顔をしているだろうなぁ。
こんな気の持ちようじゃバレーをする彼らをサポートすることなんてできない。

大地には黙ってきてしまったことを謝らなきゃいけない。
結から聞いてるだろうけれど私の口からも話をしなければならない。

やらなきゃいけないことが沢山グルグルと頭の中を回り始める。
パンクしそうだ。

「みょうじ!」

「くろ…お…」

「さっき菅原が"お宅のマネージャーさん泣かしちゃった"って言ってきてびっくりして飛んできたんだけど」

「あー、私が勝手に泣いただけだよ?飛んできてくれてありがとう」

黒尾の毎日変わらない寝癖を見ると元気が出てきた。
この寝癖はどうやって作られているのか不思議で仕方ない。

「なあ、みょうじ。バレーしないか?」

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