「もう大丈夫だから!午前練始まるんでしょ!早くいけ!コートに戻れ!チームに戻れ!ハウス!!」
「ほんとかよ…お前無理するんだからよ…」
「本当だよ。何かあれば言うし、潔子ちゃんがものすごくこっちを見ててくれるから大丈夫だって」
「……何かあったら言うんだぞ?」
「はいはい。チームに戻ってくださーい。夜久くーん!黒尾どうにかして〜」
結局、夜久くんに助けを求めて、黒尾を引き渡す。
夜久くんにはなんだかんだで本当にお世話になっているし、夜久くんがいないと黒尾はどうにもならない気がしてる。
午前練の1セット目は烏野とやるらしく、潔子ちゃんと仁花ちゃんが私のそばに立ってくれている。
朝潔子ちゃんに謝ると、「謝らないで…!」と言われたので、「ありがとう」と伝えた。
そろそろ腹くくって大地と話をしなきゃいけないなぁ。
勝手にいなくなったこと謝らなきゃだし、事情も説明しなきゃだ。
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昼休みに入り、潔子ちゃんとお昼を食べようと食堂に足を踏み入れたところで黒尾に腕を掴まれた。
「なに」
「飯くおーぜ。大丈夫だって。烏野の主将くんはいないから」
「なら、いいよ」
「本当に嫌いなんだな」
「嫌いっていうか、友達として好きだからこそ会わせる顔がないんだよ。逃げてきたわけだし?」
今日の昼ごはんのカレーにスプーンを入れて、口へと運ぶ。
ちょっと辛い。辛いものが苦手な私にとってこの辛さは少しきつい。
「逃げてきた…って」
「あれ、言ってなかったっけ?私、大地と幼馴染なの。高校入学と同時に一部の友人にだけ伝えて東京にきたんだ」
今朝、体育館で夜久くんにした話を黒尾にも説明する。
"バレーはもうできないの"と言ったとき少しだけ表情が曇ったのが見えた。
近くにいた、研磨や梟谷の木兎まで少し申し訳無さそうな顔をしていた。
「でも、体育でする分にはなんともないし、死ぬわけじゃないから」
「いや、俺も無理矢理誘ったりして悪かったなって」
「ううん。本当に嫌なら黒尾とは縁切ってるし、バレー部の皆と一緒にいないよ?まあ、昔は本気で離れようとしたけどね」
奥の方で烏野で出会った仲間達と楽しそうにご飯を食べる大地の姿が見える。
結もたまにLINEしてきてくれるけれど、元気かなぁ。最近電話してないな。
「大地には謝らなきゃいけないこと沢山あるの」
「おう」
「まだ勇気でなくてさ〜。黒尾には申し訳ないけど、しばらく見守っててもらってもいい?」
「しかたねーな!任せなさい」
「あ、でも無理矢理合わせようとするのはダメだからね」
「………」
「ギクって顔した。絶対にダメだからね。おばさんに頼んで今年は秋刀魚を食卓に並べないようにしてもらうから」
「は!なんでお前俺のかーちゃんと仲良くなってんだよ」
「いや、それ私のセリフだし。おばさんとは何度か会ったことあるから」
「そのセリフそっくりそのまま返す」
「クロもなまえも食堂でコントしないで」
「コントじゃないから!」
「コントじゃねぇ!」
嗚呼、またやってしまった。
木兎にも「コントだコントだ」と騒がれたし、烏野の皆にも注目された。
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