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今日は珍しく部活後の自主練時間はナシになり、バレー部全員で帰宅することになった。
すこし家が遠い私は部員のみんなの好意によりいつもこの時間に帰っているのだけど、みんなでワイワイと帰るのは久しぶりだ。

「そうだ、影山」

「ん?」

「もうすぐ英の誕生日なんだけどさ、プレゼント何がいいと思う?」

目の前を歩く"元"コート上の王様の影山飛雄に声をかける。
中学時代色々あったと聞いたけれど、英に内緒でプレゼントを買うために相談する相手には最適だ。

「なんで俺に聞くんだ」

「だって、この中で1番英のこと知ってるの影山じゃん」

「元チームメイトってだけだろ」

「付き合って初めての英の誕生日なの〜〜!ね、影山協力して?」

少し歩みを速めて影山の隣に並んで、パンっと手のひらを合わせて頼み込む。
金田一に頼むことも考えたが、あいつは常に英といるし、口を滑らせそう。よってボツ!なのだ。

一進一退の攻防をしていると、影山含めバレー部員の歩みが止まった。
もうすぐ正門なのになぜ止まるのだろう、と影山に向けていた視線を正門へと向けるとそこには、私の彼氏である国見英が立っていた。

「英?!なんで……」

「いや、今日たまたまオフになって、なまえと帰れるかなって思ってきたんだけど。」

視線を私から私の隣にいる影山に移す英。
少しまずいところを見られてしまったかもしれない。
バレー部のみんなも少し不安がっている。

英は「どうしよう」とアタフタしている私のところまで来て、手首を掴むなりズンズンと歩いていく。
先輩がたに「お疲れ様です!」とだけ叫んでおこう。
英が怖いです。

「英!ちょ、はや、英ってば!」

少し荒げた声で英を呼んでみるとやっと止まってくれた。

「なんで影山と一緒にいたの。」

「今日はたまたま部活後の自主練がなくなって。」

「影山の隣にいる必要はないじゃん」

英の誕生日の相談しなければ私はやっちゃんの隣を歩けていたんだ!と反論するわけにはいかなくて。

はたから見たらなんだこの空間、って感じなのだがそれどころではない。
もしかしなくてもこれはヤキモチとやらではないだろうか。

「か、影山とはね、あの……」

何度も言うが、英の誕生日の相談をしてましたなんて言えるわけない。
どうしようかと考えあぐねていると、

「やっぱさっきのなし、悪い。ただのヤキモチだ」

顔に手を当てて、私から見えないようにする英。
隠せていない部分は真っ赤に染まっていて。

「英が思っているようなことは一つもないから。私は英が1番大好きだよ」

「知ってる。」

手を退けた顔は自信に満ち溢れていて。
私が好きになった顔はこれだ、なんてのんきに思ったりした。

ミントは
僕に 微笑んだ

「英、ハッピーバースデー!」
「え??」
「この前の影山との話し合いの正体です」

titled by 「不眠症」様