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GW最終日。
烏野に通う2つ上の兄が所属する部活の練習試合を見学しに行ったのが私の人生を変えたんだと思う。簡単に言えば一目惚れをしたのだ。
その日の夜、合宿から帰宅した兄の元へと駆け寄る。
「お兄ちゃん!!練習試合のあとに話してた人誰?!」
「なまえ?!なんだ突然」
「音駒のリベロの人!」
「夜久くん…だったはずだけど?」
夜久さん…!
私は彼に恋をしてしまったらしいのです。
一目惚れなんてこの世に存在はしていても、私に訪れることなんてないと思っていた。
だけど、夜久さんを見てそんなの嘘だと思った。
そのあとなんとかお兄ちゃんを口説いて夜久さんの連絡先を手に入れた。
お兄ちゃんは最後の最後まで「なんで妹の恋の手伝いを俺が…」なんて言っていたけど気にしない。
初めて連絡するときは、「なんだこいつ」と思われるだろうな。なんてビクビクしていたのに、夜久さんから返ってきたメッセージは「スガくんから聞いてるよ」だった。
もしかしてお兄ちゃんが私が夜久さんに一目惚れしたことを言ったの?!と不安になったけれど、杞憂だったようでゆっくりだが距離を縮めていくことができそうだ。
「で、その夜久さんとやらはどうなの?」
「ちょっとメッセージ送る仲なだけ〜。まだまだ先は長いです」
「メッセージくるなら嫌われてはなさそうね。」
「これで嫌いだって言われたら私はもう立ち直れないし、夜久さんどんだけ優しいの?って感じ」
GWが明けてしばらく経った日の放課後に友人と教室でお菓子を食べながらだべっている。
一目惚れした!と彼女に報告した時は「は??」と言われたが事情を説明すると納得したらしくそれ以来私と夜久さんのやりとりを聞いてくるようになった。
「あっ!今から部活だって!」
「やっぱりこっちとはちょっと授業時間違うんだね」
「らしいよ〜把握はしてないけど。がんばってください…っと!」
それからしばらく学校の先生などの話題で盛り上がっている最中に、"がんばってください"というメッセージに既読がついているものの、メッセージが来ない。
夜久さんは既読をつけたらすぐにメッセージを送ってきてくれるのだけれど…。
やはり、嫌われているのか?
やはり夜久さんは優しさだけで私とLINEをしていたのだろうか。
すこしショボンとなっている私に気が付いた友人が声をかけてくれる。
「なに、夜久さんに振られた?」
「まだ告白してない!…けど、既読無視されてる…」
ずいっと、画面を友人の方に向けた途端、ポンっとメッセージの受信を知らせる音がなる。
夜久さんかな?と思ってLINEを開けて
"あのさ、突然で驚かれるかもしれないけど"
"俺、なまえちゃんのことが好きなんだと思う"
口に入れたばかりのキャラメルが口から落ちそうになる。
「〜〜〜〜!?」
私の異変に再び気が付いた友人に携帯を奪われて彼女の悲鳴が上がるまで後5秒。
私が彼に"私もです。"とメッセージを送るまであと3分。
ハローハロー、
聞こえますか夜久さんの優しい笑顔が大好きです
titled by 「EVER GREEN」様