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「まてこら!!」

「待てって言われて待つバカはいませんんんん!追っかけてこないで!」

「お前が逃げるからいけないんだろーが!」

「ノヤが追っかけてくるからでしょ!」

なぜ私が放課後の校舎内でバレー部リベロの西谷と鬼ごっこをしているかというと、西谷が追いかけてくるからだ。

「なんで俺のこと避けるんだ!」

「避けてないって言ってるでしょ!部活はどうしたの!」

「お前こそどうしたんだよ!」

「私は休み!!」

陸上部に所属しているということもあって、体力には自信ある方だけれど喧嘩しながら走るのは結構体力を使ってしまう。

西谷に至っては全然平気そうで少しむかつく。

上へ上へと逃げてきてしまったため、たまたま鍵が開いていた屋上に逃げ込む。
あー、追い詰められてしまった。

「なんで避けるんだ」

「避けてないって言ってるでしょ!!しつこいと清水先輩に嫌われるよ!」

「いま潔子さんはかんけーねぇ。」

「っ、」

「俺はお前と話しがしたいだけだ」

「私は何もない」

屋上の真ん中くらいまで移動してきた私の眼の前に立つノヤをすっと避けてもう一度校舎内に逃げ込もうとしたところをドンっという音で扉が閉じられてしまった。
壁ドンというやつだ。この場合は扉ドンになるのか?
もっとときめくシチュエーションでやって欲しかった。

「なんで避けるんだ」

「だから、避けてないって…」

「避けてる」

「……………」

「なあ。」

「………から」

「?」

「ノヤが好きだから。どんな風に接していいかわからないから。いままでどんな風に接してたかわかんなくなったの、だから……」

「なんだ、そんなことか」

「そんなこと?!どんだけ私が悩んで「俺もお前のこと好きだから」

「えっ?いや、それは友達としてのでしょ?ノヤのタイプは清水先輩でしょ?」

「お前と同じ"好き"だ。」

「ほんと?清水先輩みたいに綺麗じゃないし、大人しくないよ?校舎内走り回っちゃう系だよ?」

「俺だってそうだろ?校舎内走り回っちゃう系だ!お似合いだろ」

私は今夢を見ているのだろうか。
白昼夢というやつだろうか。

「……だから、俺と付き合ってくれ」

もう夢でもいいや。
心臓が壊れそうだし、涙腺ももう崩壊してしまっている。
壁ドンのせいでノヤの顔がすぐそこにあるだけで幸せだ。

「もちろん…!こちらこそよろしく」

鬼ごっこ
(久々に鬼ごっこした…)
(ノヤって常に鬼ごっこしてそうだけど)
(なまえの方が部活で走ってるだろ)
(名前で呼んだよこいつ!)