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今日も疲れた。ほんとこの一言に尽きる。
とにかく疲れた。
3年生が引退して、2年生が主力になった今、私たち2年生の精神的疲労がすばらしい。
こんなことを笑顔で成し遂げていた先輩たちは神様か何かなのだろうか。

強豪校といえるほど強くはないが、弱くない。
通学カバンと、一回りほど大きさが違うエナメルバックを足の上にのせて、電車の椅子に座る。
都会ほど通学通勤に電車を使う人はいないし、部活帰りのこの時間だと人すらまばらだ。
あ、でも隣にすわっている男の子は部活帰りだろうか。

電車で座っているとものすごく眠たくなる。
今日も見事に例外ではなく。
家の最寄りまでもう少しあるので少しだけ睡魔に負けることにしよう。

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「…っ!どこ…?」

目を開けると聞いたことはあっても来たことがない駅名が目の前にあった。

「次の次の次が、終点、です」

次の次の次が終点か……、終点?!どれだけ寝てたんだ私!
今まで寝過ごすことなんてなかったのに。
終電には時間があるけれど、とりあえずお母さんに寝過ごしたから、もう少しだk帰るのが遅くなると伝えなきゃいけない。
そう思って、もたれかかっていた頭を上げる。

…もたれかかってた?!

「す、すみません!重かったですよね!すみません!」

見事に車内には私と私がもたれかかっていた少年しかいなかった。
この制服は伊達工業高校のもののはずだ。
友人が、「あそこの高校は男子の柄が悪い」とまでいっていたし、現にこの人の顔は怖い。

「ほんとうにすいません!どうやってお詫びをすればいいか…」

「俺の最寄り次…なので」

「本当にすみません…」

ひたすら「すみません」といっていると、駅につき二人で電車を降りる。

「伊達工業の制服ですよね…」

こくん。とうなづく彼。

「あの、本当に大丈夫なので」

ふるふると首を左右に振る彼。
次の電車がくるまで一緒に待っていてくれるみたいだ。

顔はものすごく怖いけれど、実は優しい人なのかもしれない。
見ず知らずの女子高校生によりかかられたというのに、一緒に次の電車を待ってくれるというのだ。

会話を何かしなければならない、気まずい。と思っているとありがたく電車がやってきた。

「あの、ありがとうございました。」

「いえ。」

「部活頑張ってください、」

「君も…、バレー頑張って」

なんで、と続けようとしたところで、ドアが閉まる。
なぜ彼は私がバレー部だということが分かったんだろう。

でも、またどこかで会える気がする。
明日は友人に伊達工業の人にもいい人はいるよって言おう。
明日からまた部活頑張ろう。

電車のキミ
(青根にもたれかかってた女の子ってさ)
(ああ、この前の練習試合で行った高校の制服だったな)
(確か青根がボソッと可愛いって言ってた)