「蛍くん!!待って!」

「ナンデスカ」

足を止めた蛍くんは嫌そうな、気まずそうな顔をして私の方へと振り向いた。

「あの、この前は勝手に怒鳴って怒ってごめん。」

「………」

「蛍くんのこと考えてたつもりで考えてなかったんだと思う。ごめんなさい」

泣きそうだ。
蛍くんと話せなかったこの数日が本当につらかった。
いつの間にか蛍くんは生活の一部になってたんだと思う。
ぺこりと下げた頭をわたしはまだ上げれない。

蛍くんがどんな顔をしているのかがとても怖い。

「……僕も悪かったって思ってます。すみませんでした」


「蛍く「でも、山口に頼ったことはまだ根に持ってます」


「え……」


「なまえさんって好きな人とかいないんですか」

いやいや、まちな?なんでここで恋話展開?
喧嘩のことをなかったことにしてくれるみたいだから、私としては心のトゲが一つ消えたのだけれど。
なんで、そこで私の好きな人を聞いてくるんですか


「皆、好きだよ…?」


「Likeじゃないです。Loveの方です。」


「えっ…と、」


フーッと息を吐く蛍くんは何かを決心したような雰囲気で。


「僕は、なまえさんのことが好きなんですが」


「…………?!」


「もちろん、Loveの方です。なまえさんとの好きとは種類が違うかもしれませんけど」


「いや、待って…?私たち喧嘩してたよね?」

「はい」

「蛍くんが怒ってた理由って、自分じゃなくて忠くんを頼ってたから……?」


「まあ、少しは。」


「ちょっと待ってね、頭の整理つかない」


ワタワタと慌てる私の眼の前で冷静な蛍くん。
女の子に告白をした人とは思えない。

…まって、私今、愛の告白をされてる??
えっ、混乱しすぎて何が起こったのか一切わからない。頭が動いてくれない。

蛍くんが怒っていたのは、ヤキモチ…ということでよろしいですかGoogle先生。

「今すぐ返事をくださいってわけじゃないんで。じゃあ僕はもう失礼しますね」


私の混乱を見て見ぬ振りをして宿泊棟へと向かう蛍くん。
なんであなたはそんなに飄々としてるんですか!!!


「イミワカンナイ!!!」


「なまえちゃん?!」


「あっ、すみません……」


思わず叫んでしまった言葉を通りかかったスガさんに聞かれてしまっていた。
さっき体育館から出てきたところを見る限り私たちの会話は聞かれていないみたいだけれど。

急いでマネージャーの部屋に帰って杏樹に相談だ。LINEだ。寧ろ鬼電だ。


私だって蛍くんが好きだし、大切だ。
それが"loveなの?"と聞かれると答えはでない。

この私が恋愛に悩む日がくるなんて、きっと誰も予想していなかっただろう。
なぜなら、私が一番そう思っていたからだ。