「あれ、東京タワーか!?」

「あれは……ただの鉄塔……」

前を歩く日向くんと研磨の会話で前回の遠征を思い出される。
今回は、埼玉の森然高校なので、東京タワーもスカイツリーも見えるはずがない。
大地さんが"東京にあるやつは全部東京タワーに見えるんだ!"と叫んでる。
私も小さい頃はそうやって勘違いしていた。

「で、なまえはメガネくんと仲直りしたの?」

「………まだです…。私にも非があったわけだけど、でも私なりに考えたことに関して怒られちゃって納得いかなくて…」

「まあ、せいぜい悩みなさいや」

ポンポンと頭を撫でて、大地さんたちの方へと流れていく鉄朗さんは、先輩だなぁと初めて思った気がする。
どこの高校も主将さんしっかりしてるんだなぁ。

▽▲▽

「久しぶり〜!元気だった〜?埼玉暑いでしょ」

「お久しぶりです!宮城も宮城で暑いんで、そこまでは変わらないですよ〜」

体育館へ入り、マネージャーさんたちと挨拶を交わす。
マネージャーのグループLINEがあるため、私としては久しぶりという感じはないのだけれど。

お互いの部活のことや、たまに恋バナ、そしてたまに勉強について話したりするLINEグループである。

「洗濯・食事班とスポドリとか作る組に分かれようと思うんだけど、あみだとかでいい?」

「「おっけー」」

「「はい」」

そして、そのあみだの結果、私と谷地ちゃん、生川のマネージャーさんが洗濯・食事班になった。

お昼ご飯は何がいいかな、大量生産ものでお昼にいいものといえば、オムライスとか…?ケチャップライスは最悪、ご飯を炊くときにケチャップ混ぜて炊けばいいし…。でも人数分卵焼くの大変だなぁ。
じゃあ、チャーハンとスープとサラダのほうが楽かな。

買い出しの時間までは体育館で選手たちのサポートをする。

やっぱり、東京の学校は強いなぁ。
その中でも全国常連校の梟谷学園が一つ頭が飛び出ている。

この中で一番弱いのは烏野だけれど、一番成長を期待できるのも烏野だから、きっとこの合宿で強くなる。

日向くんと影山くんの新しい速攻も決まってくれればいいのだけれど。

「ナイッサー」

「なまえちゃん!仁花ちゃん!お昼の買い出し行こう〜!」

「あ、はい!!」

生川のマネージャーさんに声をかけられて、潔子さんに2人で"お願いします!"と声をかけて、監督たちから預かった財布を持って、3人でスーパーへと向かった。