「なんで、蛍くんに、言わなきゃいけない、わけ?!私にだって考えが、あるわけじゃん!口出ししないで…!」

「そうですか。すみませんでした。」

嗚呼。こんなことになるなんて、誰が思ったか。
忠くんあたりは予想してたんだろうな、なんてポロポロと涙を流しながら、離れていく蛍くんの背中を見つめながら考える。

部活の後に残る後に忠くんに送ってもらうって蛍くんに伝えたら、"なんで山口なんですか。"って怒鳴られた。怒鳴られたというより、怒られたといったほうが正しいのかもしれない。

なんで怒られるのかわからなかったし、蛍くんに許可を取る必要性は微塵もありやしないじゃないか。

森羅万象に優しいという噂の私ですらさすがにカチンときた。から、こうやって泣きながら起こってしまったのだ。
本当にめんどくさい女だな私。

「なまえちゃん?!」

「っ、潔子さん…、」

「すみません、大丈夫です、」

体育館の近くで喧嘩していたため、潔子さんに泣いてる姿を見られてしまった。
涙を拭いて、練習へと戻る。

「球出ししまーーす!」

私の珍しい怒鳴り声を聞いたからか、明るく体育館の中に入ったというのに、"大丈夫か…?"という視線がすごい。特に大地さん。

日向くんと影山くんも意見の食い違いで喧嘩をしているのに、私たちまでこんなことになって迷惑をかけるわけにはいかない。

「シンクロ攻撃ですよね!やりましょう!」

タタッとボールの元へと走る。

私なんかのことで練習を止めるわけにはいかない。
2週間後の夏休みには東京合宿も残ってるから。

▽▲▽

あの喧嘩から2週間が経ったけれど、未だにほとんど会話がない私と蛍くん、そして日向くんと影山くん。

「なつやすみだぁぁ!!」

「田中くん………」

「といっても、部活漬けになるだけだべ」

体育館の外に向かって叫ぶ田中くんを横目に私たちは部活の準備をはじめる。
明後日からとうとう1週間の東京合宿だ。
明日の夜中にこちらを出発するらしい。

あの日からちょくちょく大地さんたちから、「大丈夫か?」と連絡が来ているけれど、何も言えずにいる。
私が招いた問題なわけだから、大地さんたちに心配をかけるわけにはいかない。

合宿中になんとかなればいいのだけれど。