お店の中に入らせてもらって、肉まんを頬張りながら世間話に話を咲かせていると、いつの間にか6時を回っていて、そーいや今日の夜に男の子来るんだよな…でもこの姿の方が調子狂わないからいいか、とひとりごちて杏樹との世間話に意識を戻した。

ガヤガヤと突然外がうるさくなってきた。
サッカー部だろうなぁ、あいつらうるさいし、と思っていたが入ってきたのはバレー部主将でクラスの女子の間で"結婚するならこの人みたいな人がいい!"ランキング第1位の澤村先輩だった。

賑やかだなぁ…。特に賑やかなのは少し小さいオレンジ寄りの髪色の子と同じ学年の野球部より坊主が似合うと評判の田中くん。

「あ!てっちゃんゴールデンウイークに宮城来るんだって!うちのバレー部と試合なんだって」

向かいに座る杏樹からスマホの画面を見せられる。
てっちゃんとは、杏樹の従兄弟で1つ上の男の子で、確か東京の音駒高校に通っている黒尾鉄朗さんだったはず。
私も1度だけ、茶髪の姿で会ったことがあるけれど髪型がすごかったことと背が高いことしか覚えていない。
そっか、バレー部なんだ鉄朗さん。

「結構時間経っちゃったね、帰ろっか」

杏樹の鉄朗さん報告が終わったところで私たちは解散した。
ちなみに、バレー部の皆さんはお店の前で溜まって肉まんを頬張っていた。

▽▲▽

「ただいま〜」

「おかえりなまえ。そろそろ蛍くん来るから準備しておいてね」

準備とはなんですか母上。
晩御飯か?晩御飯なのか?と思いつつリビングへと向かうと普通に机の上に晩御飯らしいものは並んでいたから晩御飯ではないらしい。

「おかあさーん。準備ってなにー?」

今更、玄関の掃除をしているお母さんに話しかける。

「その髪の色よ!直しておきなさいよ〜。どうせ一緒に住むんだから、黒髪じゃないほうがいいわよ」

そういうことね。じゃあ、シャワーを浴びてこようかなと思い、タオルと服を持ってお風呂場へと向かうことにした。

▽▲▽

髪の色をすっかり落として、髪を乾かしているとピンポンとチャイムがなる音がした。
さっき母が言っていた"蛍くん"だろう、パタパタと母が玄関へと走っていく音がする。

「いらっしゃい!」

「今日からお世話になります。」

そんな会話を右から左に流していると完璧に髪は乾き、茶髪に戻ったため、リビングへと向かう。

扉を開けるとそこには少し金髪かかったメガネ長身のかっこいい男の子がいた。

「あ…こんばん…は」

「今日からお世話になります。」

そう笑った彼の目の奥は笑ってないように感じ取れた。
こっから先の生活に私は不安しか感じません。助けてください。