「あ、茶色は実は地毛でして……今まで黒のスプレーとか、ウィッグとかで隠してたんです」

潔子さんと忠くん、蛍くんと烏養さんについては、突然髪を切ったことにしか驚いてない様子だけど、他の人は違う。
田中くんに至っては息すらしていないのでは…?

「みなさん生きてます…?」

「あっ、悪い…びっくりして頭がついていかない…」

「今まで黙っててすみませんでした。でも、このまま黙り続けてても何もいいことないし騙してるみたいで心が痛くて……」

どんどん声が小さくなり、俯いてしまう。

「どんなみょうじでもみょうじだべ」

何事もないようにニコッと笑うスガさんは天使かと思いました。
驚きはしたものの、スガさんの一言でいつも通りにみんなが接してくれるのがとても嬉しかった。

「一つだけ気になったこと聞いていいか?」

「…?大地さん、なんですか?」

「みょうじはついさっきまで茶髪のロングだったってことだよな?ということは、坂ノ下とスポーツ店で見たみょうじ似の人はみょうじだったってことか?」

「はい……」

「なるほどな〜!そうかそうか!どおりで雰囲気が似てたわけだ!人って髪型で結構変わるんだな!旭さんも髪切ってみたらどうですか!」

ガハハと笑う西谷くんにホッとする。
さっきまでの教室での雰囲気が嘘かのように吹っ切れている。

西谷くんの声にびっくりする旭さんも髪型が変わっている。
今までのびちっとした感じではなく、前髪がおろされている。
潔子さんが"東峰の髪型って将来ハゲそう"って心配してたっけな。

「まっ、俺ら3年はまだ部活残るしこれからもよろしくな!!休憩終わり!練習再開するぞ〜!」

「「「うっす!!」」」

いつも通りすぎて少し拍子抜けしたが、黙ってたことに関してはなにも言われなかったからとっても嬉しかった。
潔子さんには、"綺麗だったのに"と残念な顔もされてしまったけど、これでいいのだ。

烏野は頭髪に関してはそこまで厳しくないから、茶髪でもなにも言われないはずだ。
でも、明日の朝の杏樹はうるさそう。

私もマネージャーの仕事をしようと思って回れ右をした瞬間扉が開き、武ちゃん先生が飛び込んでくる

「みんな!東京!東京行くよね!」

「?!?!」

鼻血を出しつつ、手に持った紙を読み上げる先生。
まとめると、東京での梟谷グループでの合宿に今回は烏野も参加させてもらうということだった。
そういや、去年杏樹と鉄朗さんたちに会いに行ったときにちょうどその時期にかぶったらしく、背が高い人ばかりの場所に行った記憶がある。
ツンツン頭の人に"黒尾の彼女か?!"とも言われた気がする。

「勿論、行きます!」

そう返事をみんなですると、先生は会議があるらしく急いで体育館から出て行ってしまった。

東京遠征で盛り上がってるみんなを横目にふと思い出したことがある。

合宿は確か期末テストが終わったあたりだった気がすることだ。

大丈夫なの………??