「で、早くない??」

「そうかな?」

出来上がったミサンガを杏樹に点検してもらっている。
もちろん、西谷くんがいないところで。だ。

ちなみに、刺繍糸を買ってから一週間ほど経っている。
明日がとうとう常波との試合だから早くもなんともなくて、間に合わないかも!と焦ったりもした。

潔子さんからも横断幕を綺麗に直せたよ、と昨日の夜にLINEが来た。
今日の練習のあとにお披露目だ。

「しかしよくまあこんな綺麗に編めたね…1本何時間かかったの」

「最初のほうは5時間とかかかったけど、最後のほうになると2時間とかかな?」

「2時間でこんなに編めるの?!意味わかんない………」

ちょっとだけ頑張ってKARASUNO という文字と各選手の背番号を入れた。
足首にまくにはちょっとだけ太いかもしれないかなーと思ったけど大丈夫だと信じている。

「喜んでくれるといいね」

「うん!」

▽▲▽

「皆さんちょっといいですか」

烏養さんと武ちゃん先生の話が終わったところで、小袋を取り出して皆の前に立つ。
私がミサンガを渡している間に潔子さんと武ちゃん先生は横断幕のお披露目の準備をしている。

「実は、明日から始まるIH予選で皆さんが優勝できるように、と想いを込めてミサンガを作りました。よかったら受け取ってください」

1人1人に手渡ししていく。
どうか優勝できますように、どうか三年生との最後の試合になりませんように。


まあ、結局さすがの潔子さんの「がんばれ」に全て持っていかれたけど、照れた潔子さんが見れたので私としても良かったと思う。

明日は私はルール上ベンチに入れないため観客席からの応援になる。
ちょっとだけさみしいけど大丈夫。

いつも通り蛍くんと帰路につく。

「蛍くんさ、緊張しないの?」

「たかが部活ですよ?緊張するわけないデス」

「そっか、蛍くんはすごいね」

「別にそんなことないです」

「そんなことあるよ!今日は早く帰ってゆっくり寝ようね」