「これ…!」

「備品整理してたら見つかったの。IH予選でこれ使いたくて綺麗にしようと思うんだけどどうかな?」

「素敵です!西谷くんたち絶対に泣いて喜ぶと思います!お手伝いさせてください」

「ありがとう、でもこれは私一人でやらせてほしい。今まで3年部活をやってきたけどずっと何もできなくて、悔しかったからこれは私にやらせてほしいの」

そう言う潔子さんの目は真っ直ぐで、誰よりも烏野バレー部を愛しているんだと思った。
潔子さんがいることで部の雰囲気は柔らかくなっただろうし、何しろ私がたくさん助けられた。
"何もしてない"なんて言葉は潔子さんには似合わないけれど、もう一人でこの弾幕を直すって決めたなら私は何も言わない。私は私ができることをするだけ。

「わかりました。でも、何か私にできることがあったら言ってください!いつでも飛んでいきますから」

「ふふっ、ありがとう」

▽▲▽

「でさー、何がいいと思う?」

『わたしに聞く意味をなまえに切実に問いたい』

「だって、聞く人他にいないんだもん…」

その日の夜、バレー部の皆に何をすればいいか杏樹に相談をしていた。
バレー部の皆には内緒にしておきたいから相談できるのは必然的に杏樹のみ。

『きっとどんな物での彼らは喜んでくれるわよ』

「まあそうなんだろうけどね…」

あの弾幕に勝つ!とまではいかないけれど、あの弾幕みたいにみんなのこと応援できるものがいい。

『なら、ミサンガは?足首にでもつければ試合中でも大丈夫でしょ』

「それだ!!!ありがとう杏樹!」

刺繍糸が手元になかったため、明日の部活帰りにでも手芸店に急いで駆け込むことにした。
蛍くんにもばれないように頑張らなきゃ。

「で、なんで私も呼びだされてんの」

「ごめんって!蛍くんごまかすのにはこれが一番だったんだって!」

「ばれちゃ意味なくなるしねぇ」

部活終わりに杏樹と校門前で待ち合わせをして、蛍くんたちバレー部のみんなを振り払って(言い方がひどい)、手芸屋さんに来ている。

「無難にオレンジと黒かな」

「ユニフォームカラーがオレンジと黒だからいいんじゃない?」

「よし、じゃあ買ってくるね〜」

「はいよ〜」

うちのバレー部はオレンジと黒のユニフォームで、とっても綺麗だ。
時間的にあんまり凝ったミサンガは作れないけれど勝てるように想いを込めて編むんだ!