「これでいいのかなぁ〜?部室にあったやつと同じなんだけど」

「いいんじゃない?」

「杏樹…」

「ごめんって!念のために写真撮って先輩たちに確認とったら?」

「んー、そうする」

LINEのアプリを開き、大地さんの名前を友達内検索をして、これでいいですか?という一言とともにスプレーとテーピングの写真を送る。


「返信来るまで待たなきゃね」とか杏樹と話をしていたのに、後ろから「あれ、みょうじからline」という聞き覚えがある声がした。

この声は、大地さん…?

「スプレーとかってことはこの棚の裏じゃね?」

「みょうじいるんすか」

「みたいだべ」

やばくね…?

杏樹のほうに視線を向けると、「あらら」みたいな顔をして完全に他人事。あの声はスガさん、田中くんと大地さん。たぶん、旭さんと西谷くんもいるんだと思う。

「あれ、この前月島と醤油買いに来てた…」

時はすでに遅し。
茶髪だからばれないと信じている。
皆の反応を見る限り、ばれていないみたいだ。

「どうも…ちょうど出かけてるっていったらなまえちゃんに頼まれて…」

「あれ、横にいるの黒尾じゃね?」

「やほーノヤ」

「黒尾って音駒の主将と名前同じじゃん」

西谷くんが杏樹に話を振ってくれたため、杏樹に話題がうつる。

「あ、それたぶん私の従兄です」

「本当か!練習試合中にどっかで見たことある顔だなあと思ってたんだよ」

杏樹と鉄朗さんはそっくりだし、杏樹自身も「最近、よく似てるっていわれる」とも言っていた。
顔だけじゃなく、性格までそっくりだと思うんだ。

携帯をのぞくと、目の前にいる大地さんから、「今ちょうどスポーツ店にいるから、買っておくから、みょうじは買わなくていいよ」というLINEが来ていたので、お言葉に甘えて任せることにした。

「俺らがスプレー買っていくってみょうじには連絡したので、大丈夫ですよ。」

「あ、そう…ですか。じゃあ、お任せしますね」

「じゃあ私たちまだ買い物あるから、行くね!」

「また学校でなー」

少しひやひやしたけれど、杏樹のおかげでなんとか乗り切ることができた。
後でアイスでもおごることにしよう。

すべて話してしまえばこんなにひやひやしなくていいんだろうけれど、まだ少しだけ勇気が出ない。