まって、反射的に答えちゃったけど、さすがにまずくないか?
「お母さん蛍くんも待ってるよ」って言っちゃったよ!!

蛍くんの向うで山口くんがわたわたしてるし、影山くんと日向くんは「何言ってんだ月島」という顔をしている。
スガさんと大地さんと旭さんは「は?」という顔をしている。
家が近所だからって言い訳すればいいのか?それなら山口くんも誘わなきゃ不自然になってしまうし…。

「じゃあ、なまえさんと僕こっちなんで」

そういい、私たちの家に向かって私の腕を軽くつかんで歩き出す蛍くん。
確実にみんなに怪しまれた。いや、田中くんと西谷くんはまだ手作りお弁当について話してたからみんなというのは間違ってるかな…。

「蛍くん!なんであんなこと言ったの」

「なんとなくデス」

蛍くんは足も止めず、振り返りもせず私の手首を握ったままずんずんと歩いていく。
こーやって意地悪してくるあたり、まだよくは思われてないんだろうなぁ。
どうやったら仲良くできるのか…。男の子は本当にわからない。

▽▲▽

「やっぱり嫌われてるのかなぁ」

「そーいうわけじゃないと思うよ。私も勘が正しければね!てっちゃんも言ってたし大丈夫だって」


次の日のお昼休み、私は昨日の出来事を杏樹に相談していた。
田中くんにお弁当を渡したって話した時はものすごい大声を出して驚かれて、クラスのみんなの注目を集めてしまったけど。

蛍くんには家で渡しておいたのだが、朝挨拶をしたらちょっと不機嫌に「…おはようございマス」と返されてしまった。

朝練中も機嫌が悪かったみたいで、山口くんがちょっとビビってた。

「まぁ、反抗期なんじゃない?大丈夫大丈夫。でさ、今日どうする?」

今日は体育館の点検で部活は休みで、お昼ご飯は食べるものの、短縮授業で13時前には帰れるため、ほか後は杏樹と遊ぶ約束をしている。
東京ほど学校帰りによるようなおしゃれなお店はないけれど、放課後の時間つぶしくらいはできる店はある。

「服買いに行きたいから、いったん家に帰ってからでいいかな?」

「おっけー、じゃあ準備できたら連絡して!なまえの家のほうが近いし」

「はいよー」と返事をしてお弁当を片付け、掃除の準備をしていると、廊下のほうからドタバタと誰かが走ってる音がする。
廊下は走っちゃいけません!って小学校のころに先生から習わなかったんだろうか。

とか思っていたら、足音は我がクラスの前で止まった。
そーいや西谷くんいないし西谷くんだろうなとか思っていたら扉が開いて「みょうじ!」と私の名前が呼ばれた。

「あ、はい」

返事をするや否や、私の手を取って走り出す田中くん。
なんだなんだ、とクラスのみんなが注目するが「田中か。」という顔をして自分の作業に戻りだす。

この前の西谷くんの時といい、うちのクラスはなんなの?!杏樹に至っては爆笑して携帯で動画を取ってやがる。

「ちょ、はや、ちょ、たな、かくん!!」

何を言っても聞いてくれないし、足早いし何だこいつ!
髪の毛引きちぎって禿げさせてやろうか、と思ったけどもともと坊主だった。無理じゃん。

そして、連れてこられたのは男子バレー部の部室。
ほとんどの部員が集まって食べていた。もちろんその中には西谷君もいた。

「で…私はなんで田中くんに引っ張られたの…?」