「でさ、なまえは”蛍くん”のことどう思ってるの」
昼休み。私はお弁当をつつきながら、中庭で杏樹の尋問を受ける。
どう思ってるの?と言われてもただの後輩で居候。そう答えると、は?ありえない…。なんかないわけ?!となぜか怒られてしまった。
確かに、少女漫画でよく見る展開なのかもしれないが、蛍くんはたぶん私のことをあまりよく思ってないとおもう。
最近は憎まれ口たたくのが少なくなってきたとは思うから、嬉しいといえば嬉しいけれど。
でも、世の中の女子が憧れる出来事なんてまったく起きない。
「何か起こるなら起こってほしいくらいだよ…。でも、家か部活限定で。」
「部活ならなんかあるんじゃないの?まぁ私は何にも知らないけどね。てっちゃんの高校なんてマネージャーすらいないから参考にならないけど!」
そう。音駒には女子マネージャーがいない。
あとあと研磨から聞いたのだが、あのモヒカン男は女子と話すことに慣れていないため私にガンをとばしていたらしい。
女子マネージャーを入れたくてもあんなモヒカンにガンを飛ばされたら、ほとんどの女子は逃げていくと思う。
「んー、でもまあ、蛍くんといるとなんだかんだ楽しいよ」
「ならいっか」
「うん。料理の腕も上がりそうだし」
なまえさん、と毎日聞くようになった声が耳に灰r、反射的に顔を上げる。
そこには蛍くんと山口くんがたっていた。
「あ、どうしたの蛍くん」
「今日の晩御飯っておばさんですか?」
「あー…たぶん」
「じゃ、何でもないです。失礼します」
ぺこり、と杏樹に頭を下げて、校舎の中へと戻っていった。
何だったんだ。
周りには杏樹しかいないから別にいいんだけど…。
「おお、蛍くんはすっかりなまえに胃袋つかまれちゃったね」
「は?」
「その言葉通りですよ〜」
と、自動販売機で買った飲み物に口をつける杏樹。
胃袋なんてつかんだ記憶ございませんが!!
「お昼休みそろそろ終わるね。教室もどろっか」
「そうしよ」
▽▲▽放課後、再び事件が起きた。
「こんに…は?!」
教室でジャージに着替えて、教科書などが入ったカバンを抱えて第二体育館へ入ると田中くんが泣き崩れていた。
隣には西谷くんが立っていて、”わはは!お前もう驚かないって言っただろ?”とかいって笑ってる。
ストレッチはどうしたストレッチは。
因みに縁下くんは横でアップをしている。
またバカなことしてんなぁ、という目をしている。
縁下くんは2年のドンなんだろう。唯一の良心というか、この人がいないと2年生はだめになると思う。
今の3年生が卒業した後が怖い。
「これ何…?」
「あ、みょうじ。田中と西谷ならほっておいていいから大丈夫。衝撃の事実だぁぁ!とか言ってたけどきっと大したことじゃないだろうしすぐ立ち直るよ」
「あ、ならほっておくね…。」
縁下くんに確認するとやはり、そこまで大したことではなかったので、放置という選択肢をとることにした。
「ちーっす…って田中なにしてんだよ」
「スガさぁぁぁぁん!!!月島が月島が!」
「月島がどうしたって?」
スガさんが来たと思ったら、田中くんが泣きながらスガさんのところへ走っていき、後から来た大地さんにも泣きつき、そこから泣き崩れていた理由を話し始めた。
「月島が…この前の合宿前の土曜日の弁当…あれ、みょうじの手作り弁当だってノヤっさんが…………」
「「は?」」
「え、あの栄養考えまくってたあの弁当?」
「たぶんそれっす…」
まって、縁下くん!
大したことじゃないことないじゃん!テンパって日本語おかしいけど、え、まってまって放置という選択肢を選んだことが間違いだったみたいです…。