1年生の教室に来てみたものの、廊下では蛍くんらしき背の高い男の子は見つからない。
取りあえず教室をのぞいてみようと思っていると目の前に山口くんがいた。

「あ、山口くん!」

いやしかし、なぜこんないい子が蛍くんと一緒にるのか不思議である。

「みょうじさん。ツッキーに用事ですか?」

「そうなんだけど、いないみたいだから…。これお弁当なんだけど渡しておいてくれるかな?」


「はい!」

「あ、あと今日のお弁当はお母さんだからおいしいと思うよって伝えておいてね」


「…?わかりました!」

そう答える山口くんの笑顔はとってもかわいくてここが学校でなければ抱きしめていたところだった。

とりあえず山口くんにお弁当を渡すことができたので教室に戻ることにした。
しかし、その道中からすでに杏樹の尋問がはじまっていた。
この前の西谷くんや田中くんなんて比じゃないくらいの勢いだ。

「じゃあ、初めに聞くけど”今日のは”ってなに?昨日のはなまえの手づくりなわけ?」


廊下では蛍くんと一緒に住むことになった経緯を聞かれ、教室に戻ってからは先ほどのお弁当ことについて聞かれ始めた。


「お弁当作ったのは、マネージャーに勧誘された時と次の日の練習だけだよ」


「なまえは料理とか女子力高いものが得意だからねぇ…。で、あと蛍くん”には何作ったの?」


「え、とりあえずお母さんのない日はご飯つくったでしょ?あとは…ショートケーキか。でもショートケーキは差し入れとして持って行ったから蛍くんにだけ作ったわけじゃないよ」


「え、まって”蛍くん”ショートケーキ好きなの!?かわいい!!」


「ちょ、杏樹声大きいって!」


ごめんごめん、と謝る杏樹はとっても楽しそうで。
人をからかったり、見たりして楽しむのは本当に本当に鉄朗さんに似ていると思う。
昨日の練習試合で十分わかった。


「で、なまえのことだから冷凍食品なんて使わないんでしょ?それを見た皆はなんて?」


「私が蛍くんの弁当作ったとは知らないけど、栄養考えてくれてるなぁとかおいしそうとか言ってくれたよ」


「え…あれお前が作ってたのか…?」



この声はGW中たくさん聞いた西谷くんの声である。
嗚呼、なんで私はこんなに2年生のおバカコンビ(GW中に私が命名した)にこんなに見つかったり聞かれてしまうんだろう。
今回は私の不注意かもしれないけど!


「西谷くん…。」


「いやー合宿中のめしうまかったから、料理とか得意なんだろって思ってたけどさ!」


なるほどな、と頭を上下に動かしている。
あれ、田中くんみたいに騒がないのあ。この前の尋問は何だったんだよ。


「あれ、驚かないの…?」


「まあな。散々お前らに驚かされたからもう驚かないぜ!」

キラーンといった効果音が付きそうなセリフをかっこよく決める西谷くん。身長が少し残念である。
でも、一緒に住んでいるとばれたらきっと騒ぎ始めてバレー部全員巻き込みかねない。
きっと田中くんと西谷くんは再起不能になる気がする。
私が蛍くんの名前を呼んだだけで田中くんはほぼ灰に近かったし。


「人見知りするけど、そっからの西谷のコミュ力の無駄な高さには毎度毎度びっくりするわ。いつの間になまえと仲良くなってんのよ」


「黒尾!皆仲いいほうがいいだろ?みょうじは意外と面白いやつだったしな」


そりゃどーも。と返事をしたところで担当が教室に入ってきたため会話は中断。
休み時間へと持ち越しとなった。