西谷くんは力加減はちゃんとしてくれているから、痛くはないのだけれどなんだかへんな気分だ。

「西谷…?みょうじさん困ってるからそろそろやめてやれ…?」


「あ、わりぃ!みょうじ!」

「ううん、大丈夫」

東峰先輩が西谷くんに声をかけてくれて、バシバシと背中をたたかれる行為から助けられた。

「あ、山口くんは何が好き?」

「俺ですか?俺は、ふにゃふにゃのポテトが好きです」

”それと、ツッキーってジャンクフード嫌いじゃなですよ。俺とたまにファストフード天行きますし”と小声で教えてくれた。

影山くんにも日向くんにも聞いてはみたものの今日晩御飯には向いていなかった。
考えなきゃいけないんだけど、みんなの意見は参考になるようでならない。
みんなと別れたら蛍くんに相談してみよう…。

「みょうじって月島だけ名前よびじゃん?あ、清水もそうか」

「え、あ、まあ。何ですか菅原先輩」


再び歩き始めたと同時に菅原先輩がなんだか変なことを言ってきた。
日本語的にはおかしくないのだけれど、話題の切り出し方に違和感しか感じないのである。

「でさ、俺考えたんだけど!俺らのことスガとか、大地だとか旭だとかほかの1.2年みたいに呼んでみない?」

「は?……あ、すみません。つまり、スガさんとか大地さんとか旭さん…ってことですか?」


「お、いいね!なんだか素が出てきた感じで!」


なにそのサムズアップ!全くよくないですけど!
もうここまで来たら吹っ切れるしかないのかな…。


「いい案だな。どうかなみょうじさん」


「澤村先輩に言われちゃ断れませんよ…。あ、じゃあ、私もさん付けのけてください。先輩からさんづけされるのなんだか変な感じで…。」


「まって?!なんで大地ならいいの!?おかしいべ」


「大地さんはなんだか逆らったらいけないお父さん…で、スガさんは何でも話せるお母さんみたいな感じ…だからですかね?」


「ぶっふぉ!みょうじナイス!的を得た回答!」


田中くんと西谷くんが再び大笑いを始めるし、山口kんまで笑ってしまっている。
そこまで笑うことはないと思うよ…。


「ちょっと!そこまで笑うとこ?!旭さん!なんか言ってくださいよ」

「え?!あ……っと、でも、本当にその通りだと思うよ?」


「お父さん…か。こんな子供ほしくはないけどな」

と笑う大地さんは本当にお父さんみたいで、バレー部の大黒柱で部員の精神的支柱何だろうな。


「あ、私と蛍くんこっちなんで、失礼しますね!」

「おう!また明日な」

「またね〜」


みんなが左に曲がるところで私たちは右へと曲がる。
家が同じ方向だといってごまかしたけれど、山口くんと真逆の方向に行っているのが怪しまれていないか不安である。

一緒に住んでいると知られないかぎりはこの前みたいな尋問を受けることにはならないだろう。どのような手を使ってでもばれないようにしなければ。


「あ、でさ蛍くん晩御飯何がいい?」


「なまえさん疲れてるデショ?ハンバーガーでいいですよ。この先にマックありますし」


「いいの?」


「ちょうど食べたい気分だったんで。」


ほら行きますよ。と手を引いてくれる蛍くんの背中は合宿前に比べて少しだけ、ほんの少しだけ大きく見えた。

▽▲▽

ご飯をたべて、お風呂にも入り部屋に戻ってからこのGW中に起こったことを整理して杏樹に報告することにした。


潔子さんに茶髪だってことがばれたこと。あと、部活のみんなのことを名前呼び…もといみんなと同じような呼び方で呼ぶようになったこと。
それと鉄朗さんに黒髪で驚かれたこと。

たった4日くらいだったのにこんなに濃かった4日は人生で初めてだ。
明日は一応お母さんが朝ごはんと弁当を作ってくれるらしい。間に合うのかはもう知らない。
朝練は休みなので少しだけゆっくり寝れる。

杏樹にLINEを送信したあと、布団に入るとすぐに眠りに落ちてしまった。