事件はロードワーク中に起きたらしい。
帰ってきた皆の中に日向くんがいなかった。
どうやら、暴走をして走り去って行ってしまい消えたらしいのだ。

なんとも日向くんらしいというか、さすが日向くんというか…。

「皆さん練習しててください。私探してきます」

「ごめんな…お願いする」

こんなやり取りをして日向くん探しの旅に出る。

にしても、あの子はどこまでいってんのよ…。
こっちか…??と思い曲がると、そこには赤いジャージでプリン頭の子の横にいる日向くんが目に入った。
赤いジャージの高校なんてここら辺付近にはないから、多分県外か、違う地区の人だと思うけど。

あの子のコミュ力の高さはどうなってんだほんと。


「日向くーん!」


「あ、みょうじさん!」


「日向くん、ロードワーク中にいなくなっちゃダメでしょ?澤村先輩とか心配してた……よ……」


日向くんに近づくにつれ、プリン頭の子が男の子だとわかった。
いや、わかったことはそれだけじゃない。

「研磨…??」

そこにいたのは杏樹の従兄弟の鉄朗さんの幼馴染、孤爪研磨だった。
研磨くんと呼んでいたけれど、なんだか研磨は落ち着かないらしくて呼び捨てにすることになったりした過去もある。
もちろん、黒髪で会うのは初めてである。

「なまえ……?」

「あ、わかってくれた?久しぶりだね研磨。研磨も迷子なの?」

「すぐわかったよ。迷子と言えば迷子…なのかな?」

研磨はゲームが好きということで、ずっとモンスターを狩るゲームをしている。
この前やらせてもらった時は私には難しすぎたけどね。

「みょうじさんと研磨って知り合いなんですか?」

「あ、うん。友人の従兄弟の幼馴染なの。去年くらいに1回会っただけだけどね」

「研磨ーー!」


遠くからまたどこかで聞いたことのある声が聞こえた。
この声はきっと鉄朗さんだ、と思い振り向くとそこには安定の髪型をした鉄朗さんがいた。

鉄朗さんは黒髪の私に気がつかなかったみたいで、研磨と一緒に行ってしまった。
別れ際に"またね"と言っていたので、きっと明日の練習試合のことについてだろう。まあ、日向くんはまったくわかっていないみたいだったけど。