今、私たちの目の前には西谷くんと田中くんがいる。尋問中である。
3年生はお風呂に行っているらしく、食堂には2年生と1年生しかいない。
もう一度言うが、西谷くんと田中くんからの尋問中である。

「…で、二人はどういう関係なんだ?ん?」


「大地さん達には言わないから話してみろ、な?」

「いや、どんな関係と聞かれても、部活の先輩後輩…だけ、ど??」


おどおどとしてしまうが、一緒に住んでいる…言い方が変だ。変えよう。蛍くんがうちに居候してるとバレたらうるさいことになるに違いない。
確実にこの状況よりも酷くなる。

「みょうじって坂ノ下で月島といた茶髪の女の子に似てるよな」

食堂にいた全員が声のした方を向く。
そこには、お風呂から出たばかりであろう、肩にタオルをかけて髪から雫が落ちる菅原先輩が立っていた。


「スガさんなに言ってんすか!あの人は茶髪だったし、メガネなんかかけてなかったんすよ?」

「んー、そりゃそうだけど…」


「なまえちゃん。お風呂一緒に入ろう?」

菅原先輩からの質問にどうしようかと内心パニックになっていると、潔子さんの助け舟が出される。

「潔子さん…!」

「一人で入るのには大きすぎるから、待ってたの」

潔子さんがやっぱり女神に見える。
この部活はきっと潔子さんが欠けてしまったら成り立たないだろう。

この場から逃げ出したかったため、潔子さんからの助け舟に乗っかる。

田中くんと西谷くんからの尋問を抜け出した私と蛍くんはほっと胸をなでおろした。
髪の毛どうしようかなぁと思っていると潔子さんが私の心臓を止めかねない一言を放ったのだ。

「西谷も田中もなまえちゃんいじめたら許さないからね」

ごちそうさまです………ご飯お茶碗5杯いけます。

▽▲▽

無事に西谷くんたちから逃げ切ったのはいいのだけれど、お風呂ということは髪の色が落ちるということで。
お風呂の中で潔子さんが目を見張ったのが視界に入っていた。あとで説明しよう。

「き、潔子さん…」

「なあに?」

お互いにパジャマというか、Tシャツにジャージという格好に着替えた後潔子さんに話しかける。


「あの、お風呂で見たことは蛍くん以外には内緒にしてもらってもいいですか」

「茶髪だっていうこと?」

「はい。黒染めすればいいんですけど、赤くなっちゃうし親からもらった茶髪を消したくなくって」


そう力なく笑うと、タオルをふわっと頭にかけてくれて、

「私は気にしないわよ?綺麗な色しているから隠すなんてもったいない」

そう笑ってくれたのだ。
目頭が熱くなり、涙がこぼれそうになったと同時にトントンと扉がノックされた。


はい、と潔子さんが返事をして扉を開けるとそこには蛍くんが立っていた。