「え?」
「おお!いい提案だべ。清水一人じゃ大変だったもんな」
「いや、あの、」
「そうだな。もう一人マネージャーがいると俺らもありがたい」
「え、ちょ」
「てことでみょうじ!入ろうぜバレー部!かっこよかっただろ?」
「あ、え、」
「どうですか?みょうじさん。確か部活には入ってませんでしたよね?この人数で清水さん一人じゃ大変なんです。」
武ちゃん先生にそんな顔をされて言われてしまえば困る。
バレーボールについての知識など無いに等しい。三回までボールに触れること、コートの外に出るとアウトということ、あととてもカッコいいスポーツであるということしか知らない。
「始めることは少しの興味からでいいと思うの。私もそうだったし」
考えあぐねている私に手を差し伸べてくれたのは清水先輩だった。
この人はこんなに優しく微笑むし、癒すし、なんだか女神のようだ。
清水先輩親衛隊の西谷くんと田中くんと話が弾みそうである。
そういうことなら…とマネージャーの件を快諾すると皆が笑顔になってくれた。
人の笑顔は本当に嬉しいものだな。
「入部届は、明日は土曜ですが練習はあるので、明日よろしくお願いしますね」
「はい」
蛍くんにバレーのことを聞いてもいいだろうけれど、迷惑がられそうだから鉄朗さんに聞くことにしよう。
連絡先は杏樹に聞けば多分すぐ教えてくれるだろう。
「じゃあ、皆さん気をつけて帰ってくださいね」
「「「はい」」」
ミーティングを終え、バラバラに帰ろうとするが、清水先輩以外は基本的に方向が同じらしく一緒に帰るのが定番らしい。
もちろん私もその"皆"の中に含まれている。
しかし、ショートケーキの材料を買いに嶋田マートに寄るため校門で皆と逆方向へ行くことになる。
さっき、嶋田さんに今から急げば閉店に間に合うと聞いてとてもあせっている。
「あ、私、今日も寄るところがあるので一緒に帰れないんです…ここで失礼します」
「こんな暗いのに女子1人ってのは気がひけるからなぁ…」
「澤村先輩、気にしないでください。私なんか襲う人いたら、人間国宝に認定したいくらいです」
真顔で本音をぽろっとこぼすと、大笑いし始める西谷くんと田中くん。
そこまで笑うことないでしょう?!
「ん〜、でも、心配だべ」
眉をへにゃっと下げて言う菅原先輩は美しくて、クラスの女子で付き合いたい〜と毎日のように話題に上がる理由がわかった気がする。
本当に綺麗な顔をしている。文化祭とかで女装させてみたい。先輩と同じクラスの女子の皆さん頼みました。心の中で手を合わせてお祈りをする。
「それなら心配ないです。僕がみょうじさん送って行くんで」
そう言って昨日、坂ノ下商店で私の手を引っ張ったように私の右手を手に取る蛍くん。
「ちょ、え、」
「月島なら大丈夫だな。じゃあ、頼んだ月島」
「ハイ」
意外と蛍くんは先輩から信頼されてるのかもしれない、そう思って皆と逆方向に別れると、お互いに呼び方が変わる。
なんだかおかしくて笑いが溢れてしまう。
「なまえさん大丈夫なんですかマネージャーって」
「ん〜心配しかないけど、やってみたいからさ。わからないこと多いから迷惑かけちゃうかもしれないけど」
「まあ、そこはわかってることなんで。」
「蛍くん?!ちょっとそれ酷くない?」
「事実を述べただけですケド」
あ、と何かを思い出したかのようにつぶやく蛍くん。
どうしたの?と問いかけると、GWに合宿ありますよそういや。なんてあっけらかんと言い放ち嶋田マートへと足を進めていた。
合宿?!あの、合宿?!お泊まり?お泊まりするの??