「おはよ〜」
「おはようございます…。黒髪。」
6時過ぎ。
リビングの扉が開いたと思えば、そこにはきちんと制服を着て、私の黒髪に突っこむ蛍くんがいた。
ちゃんとしてるんだなぁと思いつつ朝ごはんの白ご飯と味噌汁と卵焼き、そしてほうれん草のお浸しを机の上に持って行ってもらうように頼む。
「朝からよくこんなに作れますね」
「料理好きだからね〜、私だけなら食べなくてもいいんだけど、蛍くんは朝練あるからしっかり食べなきゃでしょ?あ、おにぎりも入れてるから朝練終わりにでも食べてね」
おかずを詰め終わりあとは包むだけとなったので私も朝ごはんを取ることにしたが、朝はあまり食欲がないため、味噌汁だけ飲むことにした。
どうも朝は胃が起きていないためかあまり食べられない。
お昼ご飯までにお菓子を食べて朝ごはん代わりにするのが日課である。
そこ!太るとか言わないの。
「なまえさん」
「な…んぐっ!」
蛍くんに名前を呼ばれて顔を上げると、卵焼きを口の中に押し込まれる。
「なまえさん人には食べろ食べろって言うクセに自分は食べないんですネ」
「朝はあまり食べられないんだよね」
「朝ちゃんと食べないと太るっていいません?」
「それは言わないで…!あ!蛍くん早くしないと朝練遅れちゃう!お弁当……はい!おっけい!いってらっしゃい」
もう少しで7時開始の朝練に間に合わない時間になってしまいそうだったため急いでお弁当を包み、手渡して学校へと急ぐようにしむけた。
誰かと朝ごはんをこんな風にしっかり食べるなんていつぶりだろうか。
私も片付けをして学校へと向かうことにしよう。
少しだけ早めになってしまうけど。
▽▲▽昨日課題がないと思っていたが、急に今日提出になった課題があることを教室についてから思い出したため、急いで課題をしていると、はよーっす!と元気な声で教室に入ってくる人物がいた。安定の西谷くんである。
この人の行動力といい明るさといい何もかもを蛍くんにわけてあげたいものだ。
「おはようみょうじ!」
「お、おはよう」
「昨日は潔子さんを助けてくれてありがとうな!」
潔子さん…?と一瞬考えるが、昨日という言葉で清水先輩のことだと頭の中で話が繋がる。
「あ、いや、お邪魔してごめんなさい…。でもみんなかっこよかった」
「そうか!なら、今日の放課後も見にこいよ!」
「今日…?」
今日はちょっと都合が悪いのだが。
ショートケーキを作って蛍くんが帰ってくるのを待つ約束をしているから、西谷くんの誘いは断ったはず。
さて、どうしたものか、なぜ私は今、体育館にいる??
放課後になると荷物とともに強制連行されてしまったのだ。
クラスのみんなはビックリしていたが、強制連行している相手が西谷くんだと気がつくと、なるほどなという顔をして終わってしまった。
ちょっと誰か助けろよおい!
「あ、みょうじさん。今日も?」
体育館の隅でぽつんといると清水先輩が話しかけてくれた。
今日も蛍くんを待っているのかという問いかけだろうが答えは否。
西谷くんに連行されてきました、と伝えると柔らかくフフッと笑い、西谷らしいねと言ったのだ。
「あ、先輩、今日もお手伝いします。見てるだけじゃなんだか居心地悪くて…」
「そんな気を使わなくていいのよ?部員じゃないんだし…」
「いや、一人でこの空間にぽつんといるのが…」
そういうと清水先輩は何かを察したようで、一緒に仕事やろうか、と提案してくれたのだった。
こんな気の利く女の子になりたいものだ。
清水先輩の彼氏はとって幸せなんだろうなぁ。
と考えていると、坂ノ下の店員の兄ちゃんが入ってきて、なんだか町内チームの人間と試合をするとか言い出した。
え、こいつバレーしてたんかい。あんな金髪してんのに…!
清水先輩がドリンク作ってくる、と言い外に出て行ってしまったため、何か手伝えることが無いか聞きに先生と坂ノ下の兄ちゃんのところへ行く。
「お前、なんで黒髪なの?」
しかし、坂ノ下の兄ちゃんから爆弾を落とされる結果となってしまった。